おいおいそりゃないぜ | ナノ



どうやら黒子くんはわたしたちが家を出たとき一緒にいたらしい。スマホに「部活に遅れるので先に帰ります。あいさつもせずに帰ってすみません。あと、からかいすぎてすみませんでした」とLINEが入っていた。クズ野郎からの復権おめでとう。そしてLINEの音すら心なしかいつもより控え目。電波すら微弱か。

なんだかんだ言いながら今のところ毎日続いている赤司くんからの指令である練習メニューをこなし、家の中に入ると時刻は5時すぎ。部屋について早々腹減った!とさっき買ってきたお菓子を食べている大輝にもう何も言うまい。一体何を買ってきたのかと思えば、パーティーサイズの袋菓子、普通のサイズの袋菓子、駄菓子。各種取り揃えているようだ。そういえばわたし、あのふざけた材料がなかったことのショックで何を買ったのかよく見てなかったな。いや、ないのはわかってるんだけどさ、わたしの今の精神状態そういう感じなんで察してほしい。


「……あ!」


わたしの目に飛び込んできたのは懐かしいアイツ。「まいう棒…!」そうだ、まいう棒といえば紫原くんではないか。ああ懐かしい、懐かしいねえ。数日会っていないだけなのになんだかものすごく遠い存在のような気がする。はあ、紫原くんは今一体何のお菓子を食べているのだろうか。わたしと紫原くんはお菓子友達であり、新商品のお菓子の情報交換をする仲なのである。紫原くんの可愛さと相まってとーっても幸せな時間…はあ、紫原くんと菓子トーークしたい…


「おい」
「なに?」
「お前今紫原のこと考えてたろ」
「えっなんでわかったの?!」
「すっげえキモい顔してた」


あ…これはまずい。


「あっすごいこれテリヤキバーガー味だあ!すごいね〜大輝のために作られたような味だね〜」
「……」
「うわ〜おいしそうだな〜わたしも食べたいな〜」
「……ふん」


すねただいきが あらわれた!▼

こう見えて意外とやきもち焼きなんですえへっ。とはならないよ断じて。いや、彼女としてはちょっとは嬉しいよ?嬉しいけどね、こうなったらめんどくさいのなんのって。ほら大輝ってガキじゃないですか。すぐおっぱいとか言うガキじゃないですか。ご機嫌とりとか最高にめんどくさいじゃんね!


「なまえのバーカ」
「ごめん」
「別に怒ってねえし」
「今バカって言ったじゃん」
「お前いつもバカじゃねえかよ」
「ああん?!大輝にだけは言われたくないんですけど!」
「はあ?!お前脳みそ腐ってんじゃねえの」
「腐ってんのはそっちでしょ?!」
「あーうっぜ」
「あっ大輝どこいくの!」
「うるせえな、放っとけ」


乱暴に襖を開けてどこかへ行ってしまった。大輝はガキだなあ、うん。うん……えーっと、まあ、わたしもまだ成人してないしね、ガキですごめんなさい。沸点低めですごめんなさい。元はといえばわたしが原因を作ってしまったというのに、一層怒らせてしまった。どうしたものか…そうだ、晩ご飯でご機嫌を直してもらおう!ちょっと頑張ってテリヤキバーガーをバンズから作ってみようか。いやいやテリヤキバーガーだと傷口に塩を塗ることになりかねない。テリヤキチキン、ぶりの照り焼き…ああああだめだ!なんか無意識に照り焼こうとしている。

うんうんと悩んでいると、開きっぱなしの襖からちらっと顔が覗いた。


「……飯は食うから作れよバカ!」





((不覚にもキュンとした…))
((腹減った…))


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