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トイレから帰って来た黒子くんはさっきと同じくポーカーフェイスではあるものの、全身から溢れ出す不機嫌オーラはとんでもないことになっていた。オーラって見えるんですね。極めてスピリチュアルな世界に踏み込んだ気がします。
「黒子くん」 「……」 「おーい、黒子くん」 「……」 「……黒子さま」 「なんですか」
ああもう何だよこの人!いや、もとはといえば大輝の力で思いっきり揺さぶったのが悪いけどね?!とはいえ、黒子くんの言う元に戻る方法を教えてもらわなければならない。わたしだっていつまでもこのガングロと入れ替わりたくはない。早くも自分の体が恋しいよ。今必要なのはプライドじゃない、そう、元に戻りたいという強い意思……!
「元に戻る方法教えてくれください」 「いいですよ」
なんとあっさりOKである。これは拍子抜け。てっきり靴舐めろコラァなんて言われるのかと思っていたが、黒子くんはそんな器の小さい人間ではないらしい。そうだよ、だっていつもバニラシェイク飲んでる可愛いポーカーフェイス男子じゃ「ただし条件があります」……ん?
「聞き間違いでしょう。さあ、元に戻る方法を」 「ただし条件があります」 「え」 「ただし条件があります」
どうやら聞き間違いではないらしい。この野郎さっきのことをまだ根に持ってやがる。それでも条件のことは聞かないことにしよう。このまま「え」で押し通そう。そう思っていたのに「条件って何だよ」と今までろくに会話に入ってこなかった大樹が一言。お前ほんといらないところで口出ししてくるな。
「とりあえずバニラシェーキ1年分で。あと黒子さま呼び気に入ったので今度からそれでお願いします」
この呼び方が気に入るとは相当なゲス野郎と見た。こっちがちょっと下手に出たら一気に本性を現しやがったな。黒子の名に相応しいとんだドス黒野郎め。それでも可愛いのが更にムカつくわ。
「おい黒子、それって俺も黒子さまって呼ばねえといけねーのかよ?」 「青峰くんはいいです。僕女性にそんなこと言わせる趣味ないんで」 「いやいや目の前にピチピチ女子高生がいますけど!?!!!」 「すみませんが、僕はそんなゴツい野郎を女性とは認められないので」
ええええええ!!!いや、逆にそっちのは見た目はピチピチ女子高生の中身は君の言うゴツい野郎ですけど!!そして大輝、曲がりなりにも彼女が屈辱を受けてるんだから助けようとかそういう気持ちはないのか。え?コラァ。こいつら元に戻ったら覚えていやがれ。
(おい黒子) (はい) (黒子くん) (……) (…黒子さま) (何ですか下僕) ((このゲス野郎…!))
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