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「お久しぶりです、青峰くん」
トイレから帰って来た黒子くんはいつもの見慣れたポーカーフェイスだった。よかった、安心したよ。何も知らない大輝は黒子くんの訪問(というより黒子くんが持ってきてくれたスナック菓子)を喜んでいる。黒子くんなりに気を遣ってくれたのだろう、持ってきてくれたお菓子は大輝の好きなカロリーの塊のようなものばかり。ただよおく考えてほしい。それを食べるのは大輝でも、それを脂肪として蓄えるのはわたしの身体なのである。大輝はそんなわたしの気持ちも知らず、早速パッケージを開けて手づかみで口に頬張った。ああ…その一口がデブの元。
「で、なんでわざわざここまで着たんだよ。お前も撮影か?」 「黄瀬くんと一緒にしないでください。今朝赤司くんに頼まれたんです」 「え、今朝?」 「はい、朝練をしていたら新幹線のチケットを渡されました」
赤司くん…いくら黒子くんの影が薄いからってせっかく学校に行った黒子くんをわざわざこっちへよこす必要なんてあったのかい。メールや電話じゃダメだったのかい。それでもきっと皆勤賞をもらえるであろう黒子くんに少し胸が詰まった。
「わざわざごめんね、ありがとう」 「いえ。あ、それで赤司くんから伝言です」
二人が元に戻れるかもしれない方法を見つけたそうです。
黒子君の発言に耳を疑った。黒子くんが天使に見えた瞬間である。わたしは思わず黒子くんの肩を掴んでぐらぐらと揺さぶってしまった。
「何をどうするの?!!その方法って何?!」 「みょうじさ、ちょっ」 「ほんとに元に戻れるんだよね?!!ねえ!!」 「……うっぷ、」 「これで元に戻れなかったらわたしもうお先真っ暗だよ!ねえ黒子く…ん?!!」
気付いたときにはもう遅かった。黒子くんは顔を真っ青にして頬を膨らませていた。それを見たわたしは驚きのあまり掴んでいた肩をぱっと放し、黒子くんは待ってましたとでも言うようにイグナイトパスばりの速さで元来た道を引き返していった。何だこの、罪悪感は。
(なまえ、下呂温泉って) (それ今言うことじゃない!!!)
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