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あのあとしっかり大輝を従わせてお風呂に入った。勿論目隠しのタオルはきっつーく縛ったおかげで解けることもなく、ハプニングとは無縁の安全安心な入浴をしたわけだ。だがしかし、お風呂からあがってベッドに横たわってうとうとしているときに事件は起こった。一体全体何に欲情したのか現在進行形で大輝に馬乗りされているのだ。ただその顔が、なんだそのげっそりした顔は。いや大体わかるけど、わかるけども。
「勃たねェ…」 「ないんだから当たり前でしょ」 「なまえ勃たねえのかよ」 「これで勃ったらオールマイティーすぎて泣けるわ」
このとき、青峰大輝は悟った。自分の姿をしたなまえとはヤれない、と。途端に今までこっそり心の中でなまえと二人っきりでうふんあはんな生活を送っちゃおうなんて考えていた自分が至極情けなく思えてきた。はあ…萎えた。溜め息と共に痛む体を無理矢理動かしてなまえの布団に潜った。
「…寝る」 「寝るなら向こうで寝てよ」 「痛いから動きたくねえ」 「さっきまでわたしに乗ってたのは誰だろうなあ、」 「……すぴー」 「もう寝やがったこの野郎!!!」
一度眠りに入った大輝はちょっとやそっとじゃ起きない。しかも筋金入りの寝相の悪さなので一緒には寝たくない。仕方ない、もう一方のベッドで寝ようと決めたのはいいが、わたしも相当疲れていたようでそのまま眠りの世界へ漂いこんでしまった。
そして数時間後、大輝の腕の中で本能的に目を覚ますことになる。
(ぐっ、ヘッドロックってどんな夢見てんの!死ぬ!) (すぴー…) (起きろおおおぉおお!!!)
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