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「ああ、そうだ」
絶望に打ちひしがれているわたしたちと対照的にどこか楽しそうな赤司くんは、名案でも思いついたかのような顔をした。その顔に騙されないぞ。希望から絶望のどん底への転落だなんてもうごめんだ。
「このまま学校には行けないだろ?」 「無理無理、絶対無理」 「俺も無…いや、学校を休むなんて俺には…!」 「大輝?やましいこと考えてるならあんたの息子が、ねえ?」 「おおおおおう!やっぱ無理だわ!」
こんの万年発情期男が…どうせ体育の授業でも楽しみにしてたんだろう。目の前で着替える女子を!胸を!仮にも彼女であるわたしの前でそんな下心見え見えの発言をするとは。ははは、でもこっちは大輝の息子を人質にとってるんだ、下手なことはできまい。悔しそうに手を握り締める大輝をあざ笑ってやった。「続きいいかな?」…勿論です。危うく赤司大魔王の怒りを買うところだった。いや、ちょっとお怒りだった。
「ここから少し離れたところなんだけど、うちの別荘があってね。二人がもとに戻るまではそこに住んでもらおうと思うんだけど」
「「…は?」」
「バスケはどうすんだよ?!」 「バスケットゴールならあるから自主練しておいてくれ、みょうじが」 「…はいいぃいい?!!??わたしが?!なんで?!」
こんなのおかしいよ!わたしがなんで!別荘とか二人で住むとか他にもいろいろつっこみたいところはあるけど、まずこれ明らかおかしいよ!確かにマネージャーではあるけど、二軍のマネージャーだし、さつきみたいにデータ収集できるわけじゃないし、運動神経だって皆無だし!赤司くんご乱心?!「今大輝の身体に入っているのはみょうじなんだから当然だろう」ソウデシタ。けど、けど!わたしが大輝のかわりに動いても意味ないだろうし、変な癖をつけちゃっても困るし、それになによりしんどいことは嫌だ!ここは捨てられた子犬のような目で上目遣いを…できない。これは完璧に見下ろしてる。なのにこの逆に見下ろされている感はなんだ!赤司さま?!
「僕の言うことは?」 「…ぜったーい」
(おい赤司!俺はどうすりゃいいんだよ?!) (大輝は…好きにしてくれ)
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