キセキコンビニ | ナノ



早朝のコンビニは忙しい。大きなトラックから運び出される大量のおにぎりやパンを陳列しなければいけないのだ。これは昼時のお客さんで混雑する忙しさとはまた違った忙しさである。眠気と戦いながらの陳列作業は中々つらい。そんなつらい戦いも半分ほど終わり、やけに静かな本日の相棒に嫌な予感がして雑誌コーナーに行ってみると、案の定床に座り込んでさっき入ってきたばかりの写真集を真剣に見ている姿を発見した。


「ちょっと、なにしてんの青峰くん」
「マイちゃんの新作鑑賞だよ」


見りゃわかんだろ。っていやいやいや、それ商品なんですけど。わたしの制止も聞かず青峰くんはポケットから定規を取り出してご丁寧に袋とじを開けだした。なんてやつだ。あーもういいよ、はい、お買い上げありがとうございまーす。なんて言っていると、お客さんがやってきた。中年のデ…ぽっちゃりした人である。慌てて青峰くんを無理矢理立たせてわたしもレジに立った。しばらくしてお客さんがレジに出したのはパンとお茶、それから長澤マユミの写真集。


「おいおい、お客さんマユミちゃん派かよ」


どこからともなくひょっこり現れた青峰くんはあろうことかお客さんの買った商品に文句を付けだした。お客さんになんてことを!というより、よりによってなんてめんどくさそうなオッサンにつっかかりやがってというほうがわたしの心境に近い。案の定それに怒ったお客さんはマユミちゃんのよさを語りだし、今度はそれに対抗するように青峰くんがマイちゃんのよさを語りだした。そういうのはお金払ってから店の外でやってくれ。


「だーかーら!マイちゃんのあのでかいおっ「1580円になります」だろ!」
「何言ってんだお前!マユミちゃんのあのきゅっとしたおし「1580円になります」だろうが!」


こいつら曲がりなりにも女性の前で破廉恥ワードを惜しげもなく遣いやがる。好き放題言ってくれるのはいいが、どんどんお客さんが入って来ているのにお気づきだろうか。こんな性欲の塊どもに費やしている時間なんてこれっぽっちもないのだ。かといって一応大事なお客さん、粗相をするわけにもいかない。いらいらいらいら。


「マユミちゃん!」
「マイちゃん!」


だれかこのバカ二人を殴り飛ばして。



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