両成敗

「金がすべてだよ」

渉がそういったので、私の口内はカラカラに渇いた。

「それよりもさあ、酒飲まない?」

「ここのところ、ずっとのんでるだろ?シラフの時間、ないじゃん」

渉がそういったので、私はだまってしまった。だって、考えてみればお酒を飲んでいる時間のほうがシラフの時間より長い。

「じゃあ、エフェドリンでものもうか」

「え、あれやばくない?」

エフェドリン、酒。とにかく憂鬱とした気分を紛らわして私は必死だった。笑いたいけど笑えない。ならばなんらかの化学物質、もしくは人にたよるしかない。弱い人間?知るか。私は呼吸をするだけで精一杯なの。ねえ、わかるでしょう?私ってだめかな?抱え込めない悩みや物事で一杯で、どうしていいかわからないし、自分がだめなのか良いのすらわからない。涙?そんなの枯れました。私は大丈夫だよ?きっと、少し休んだら、また元気になれる。

「ごめん、俺死ぬわ」

渉がそういったから私も、死んでも今なら後悔しないと同意した。

「よし!どっちが先に死ぬか駆けよう!」

二人して、財布のなかの有り金を全て床にぶちまける。

「ははは。人の命なんて虫いかだよ。」

渉と私は、てを繋ぎがら個人輸入した点滴キットのパックの中にアルコールを注ぎ込み、肘の内側に針を指した。

「私、点滴をうつのうまくない?」

「うん。だてにジャンキーじゃないね。」

点滴が一滴ずつ血管にそそぎこまれ、脳内は火花のように暑くしびれた。賭けは、多分成立しないだろう。だってきっと、渉と私の命の炎は同時に消えるのだから。両成敗。結局私は渉に、かつことができなかった。



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