キース+フィム
「ねえ、ねえ。キース」
「なあに、フィム?」
デスクで作業していたキースの服を、フィムの指先が小さく引いた。備え付けの椅子を鳴らしながらそれを回転させると、小さな少女がいつもより声を潜めて、部屋の中、ある一か所を指した。あれ。そう言われて、しかし彼女の指す方向を見ずともキースには何が言いたいのか察しがついた。ああ、と声を上げる。
「あれねー、なんだろうね。俺にもよくわかんないんだ」
顔を見合わせて、それから二人して視線を向ける。そこには、寄りかかりあうようにして眠るミネットとニールの姿があった。一見すれば微笑ましい少年少女のお昼寝風景だが、キースにとってその光景は珍奇の一言であった。
仲が良いなあ、とは常々思っていたことだったが、果たしてあそこまで距離が近いものだっただろうか。本当のところは当人同士にしかわからないことなのだろうが、少なくともキースが知る限り二人がそういう距離感でいるようなところは見たことがなかった。
「ずっと作業してたから全部見てたわけじゃないんだけど、確か最初に先輩があそこで居眠りしててね」
「うん、うん」
「そのあと兄ちゃんが来て。少し神機のこととか、あと世間話とかして」
「ふむふむ」
「んで、しばらく手元に集中してて。気づいたら、もうああなってたって感じ」
背を向けていたことが少しばかり惜しまれた。何があったのかがすごく、すごく、気になる。キースが知る限り、兄ニールは自ら進んで他人に添い寝をするようなタイプではないのだ。
「気になるよねぇ」
「なるー」
「あとで二人に聞いてみよっか。それまでは寝かせといてあげよう」
「うん!」
「よしよし、フィムはいい子だね」
頭を撫でてやると、少女は嬉しそうにひひ、と喉を鳴らした。彼女の純真さとは対照的に、キースは二人をからかって遊ぶ気でいっぱいだった。だって、こんな面白そうなことって、なかなかない。状況もさることながら、二人がフィムに対してどうしたって甘いことをキースは知っている。自分ひとりであったならきっと門前払いだが、彼女の質問であれば、或いは。
キースには二人をからかってどうしたいという動機はなかったが、彼らが、普段しないような表情をするところには深い興味があった。程々にはするつもりだけど、ちょっとくらいは、いいよね!
フィムと人差し指を立てて内緒話をする一方、ニールもミネットもすやすやと穏やかに眠っている。すぐそばに、おもちゃを見つけた子供のような、無邪気な天使と悪魔がいることなど知らずに。
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