*隣同士がいちばん自然
15歳か……。頭の中で確認するように意識して、改めてその人を見る。少しあどけなさの残る顔立ち、体格。前までのような険しさが消えた横顔は、成長過程にある少年特有の端麗な線で彼の姿を描く。
ふと視線に気づいたのか、その碧い瞳がミネットを捉えた。次いで、体ごと首をこちらへ向ける。
「……どうした?」
「な、なんでもないよ。見てただけだよ」
気が動転して、ありのままの事実が口から滑り落ちた。ああ、と思うのとどちらが早かったか。ニールが何か言いたげに口をはくはくとさせて、そのまま諦めたように顔を背ける。
(照れてる……)
随分と愛くるしい反応に、自分自身を棚に上げてそう思った。
こうしてみると、年下なんだよなあ。そんなことを考えてしまうのは、それを意識していない時間の方が圧倒的だからだろうか。
*好きかも、しれない ニール+フィム
絵本を読み終えたフィムはおもむろに顔を上げると、そばにいた人物の服を掴む。名前を呼びながら裾をくい、と引くと、その人は作業の手を止めて小さな少女に目を合わせた。
「ねー、ニール。ニールは、おかあさんのこと、すき?」
「……は?」
子供の思いもよらぬ問いかけに、ぴたりと止まった思考が素っ頓狂な声となって喉から飛び出した。絵本をぎゅうと抱きしめるようにしておずおずと見上げる少女の視線がじい、とニールを捉える。純粋な目が、その意図はないのだろうが、ニールを急かされているような気持ちにさせて、焦らせた。
いや、いや、それはどういった意味で。そもそも、どういう経緯で。慌ただしく駆け回る思考だがしかし、それは堂々巡りのようにして答えにたどり着くことはない。
「フィムは、おかあさんのことすき。やさしくて、あったかくて。フィムのこといっぱい、だいすきってしてくれるの!」
まるい目をいっぱいに細めて、やわらかな頬を持ち上げて、そうやって笑う少女の表情は、深い情愛を感じるにふさわしい笑み。
周囲をやわらかく絆すかのような雰囲気は、そういえば、その人、にも感じられるものだ。ああ、親子なんだなあ。なんとなくだがニールは少女に対してそう思った。
「フィム、ニールのこともすき。だから、ニールもフィムのだいすきなおかあさんのこと、すきだとうれしいの!」
頬を染めて一生懸命な様子に、それまでに巡らせ絡まっていた思考がほどけていくような感覚だった。自然と顔がゆるみ、笑みを返す。
「好きだよ、あいつのこと。……フィム、お前も」
頭に手を乗せて、ゆっくりと撫でてやる。気持ちよさそうに目を細める姿は小動物のようでかわいらしい。
――彼女の言葉の通りであればそれは、そう言えた。嘘偽りなく、確信をもって、だ。けれど、だからこそ、それがニールを悩ませた。……最初に戸惑った理由に思い当ってしまうからだった。そして、それがどういう意味を持つのか、わかっていた。わかっている。わかっているが……知れないことだ。感情の確証なんて、どこにもないのだから。
「ねえねえニール、つぎはこれ、よんで!」
今はただ、無邪気に笑う少女が、まぶしかった。
*title by 確かに恋だった
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