凍てつく冬の空気が頬を刺す。ううん、寒い。大きな袖で顔をさすりながら、琴音は雪にはしゃぐ小さな彼らを眺めていた。
彼らは雪が降るといつも、主様、主様、と集まってきてはおのおの作った雪だるまや雪うさぎを見せてくれる。部屋の中にいてもそれを持って集まってくるものだから、タオルを持ってそれを掃除する燭台切がよく頭を抱えていて、結局琴音も縁側にまで赴きそれを見守るようになった。
混ざろうともしたことがあるが、出来上がるまでは内緒なのだと言い、待ってるようお願いされた。じっとしていたら寒いのだけど、ううん、まあ、いいか。と琴音はそこでいつも、お茶や読み物をしていた。
思えば仕事の合間のいい息抜きの時間にもなっていて、彼らにそのようなつもりはなくともありがたいことだった。
「主様、見てください、できました」
とたとたと早足で近寄ってきた五虎退が持ってきた雪の塊だった。
小さな耳がついていて、それからお尻辺りには細く雪が盛り上がっていてこれはきっと、尻尾だろうと思う。
「虎、ですね?」
「わあ、わかりますか……!?」
「ええ、造形が随分と上手になりましたね」
「えへへ……」
そっと手を伸ばして、頭を撫でる。遊びに夢中になっていたらしい彼の髪には少しだけ雪がついていて、冷たかった。
風邪を引かないよう、何か暖かいものでも用意しておこう。お茶菓子もあれば、きっと喜んでくれるだろう。
「五虎退、そろそろみんなを呼んできてくれるかしら。お茶にしましょ」
「は、はいっ」
「ちゃんと手も洗っておいでね」
「わ、わかりました……!」
駆け足で去っていく五虎退と虎たちの背を見送って琴音も立ち上がる。が、ふと廊下に転がった一匹の白い虎を見つけて首をかしいだ。みんな五虎退と一緒に行ったのではなかったのかしら。
ゆっくりと近づくと虎はなんだか寒そうに身を小さく丸めていて、先ほどの彼と同じように体にほんのり薄く雪をつけていた。そういえば、よく見ると解けた雪であろう水で、あちこちに足跡がついている。ああ、結局廊下、汚れているわ。
「あなたは五虎退のところへ行かないの?」
雪を払って言葉をかける。果たして言葉を理解できるのかはわからないが、虎はゆっくりと顔を上げると琴音の足元に擦り寄る。……行かないのだろうか。
「じゃあ先に中へ入りましょうか」
抱き上げて、抵抗しないことを確認すると琴音はそのまま歩き出した。
勝手場に向かい、燭台切に廊下のことを告げると大方そうなるだろうと思っていたとしょんぼりとしていたが、後にぞろぞろと戻ってきたみんながそれなら自分たちが掃除をすると言っていたから、なんとかなりそうだった。
手伝おうとついていった琴音が雑巾がけ競争の審判をすることになるまで、あと数分のこと。
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