夏の日差しが聖域の大地を照らす。ちりりと焼けるような暑さは苦手だったけれど、最近はあまり嫌と思わなくなった。つばの大きな帽子を風に揺らして、ノルンはじいっと目の前に広がる畑を見下ろす。
よく手入れされていることはそれを見ていても、彼、を見ていてもよくわかる。くるりとノルンはその場で体の向きをかえた。聖域に建てられた家、その傍に置かれた机の上にはたくさんの野菜たち。今朝収穫されたばかりの採れたてだ。
「……美味しそうに実りましたわね。さすがはジュリウスですわ」
「そうだろう。だが、これも皆の協力あってのことだ」
じわりと汗を浮かべたまま、けれどそれに構うことなく野菜を見つめる彼はどこか嬉しげな様子をその声に滲ませて言う。
「これは早速調理を……いや、まずは使うものと譲るものに分けて……」
「……ふふ」
「ん、どうした」
「いえ。あなたがあんまりにも楽しそうで、微笑ましいと思っていましたの」
あちこちに土をつけて、目を輝かせて、まるで子供のようにはしゃぐ彼を見ているとどうしても顔を緩めてしまうのだ。
ずうっと見ていても飽きそうになかった。彼が今こうしていることを幸福と思っているのが伝わってきて、どうしようもなく温かい気持ちになれた。
「また、連れてきて下さる?」
「? お前が来たいと思えばいつでも……」
「そうじゃありませんわ。あなたと一緒に来たい、と言ってますの」
「……ああ、そうか」
「もう」
「すまない。……そうだな、次に来るときもそう出来るといいな」
多忙なことを配慮しての言葉選びだろうが、やっぱり、ほしい言葉を明確にくれない彼は鈍いというか、真面目というか。
そういうところを含めて好きになっているのだから、どうしようもないものだ。
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