甘いものは好き。あの人のことも好き。だからあの人の作る甘いものが大好き。でもそれだけじゃなくて。焼ける時の匂い、もう少し待ってろと告げる声。あの人がくれる優しい味はなんだか、愛に似ている。だったら。「お腹いっぱい食べてみたいです。」欲しがるこの気持ちは、恋に、似ている?
吐息は無意識な誘惑。欲情を癒す行為だったはずが、触れるたび、足りなくなってしまう。「ちょっとだけじゃなかったんですか。」「ちょっとで済むと思ってたのか?」「……、嘘つき。」仕方なさげに微笑みながら、彼女が触れる。唇を合わせる。瞳の奥の熱は、お揃いだった。
グラスの中に残された氷がからりと音を立てる。静かに眠る彼に、少女が触れた。肩を揺さぶって、起きてと声をかける。「……世話が焼けますねえ。」おかしげな、楽しげな笑顔。そうだなあ、なんて頷きながら、ひどく懐かしい気持ちに泣きそうになる。ああ、俺も少し酔っているようだ。
「誠意ある人ですよ、ハルさんは。」屈託のない笑みは俺には少し、眩しく映った。部屋の明かりを反射して胸元でペンダントがちかりと輝く。彼女は、ケイトによく似ていた。けれどそれだけだ。俺は彼女の面影を追うことも、それ以上に見ることもこの少女に対しては決してないだろう。
「いいところ……ブラウニーがおいしいです!」なんだそれ。と言いたいところだが、彼女の手にはギルバート手製の菓子。付き合いの長い者なら察するに易しい。安直すぎるのだ、一周回って突飛な程に。「お前のそういうとこ、見ていて飽きねぇな。」彼女にのみこまれていく世界は、とても鮮やかに見えた。
彼の指が、わたしの髪を梳く。弄ぶように、撫でるように。楽しいのかと問うてみると、返事はなく、ただ徐にその手は離れていった。「……それは、それは。」「なんだその含み笑いは。」怪訝さの滲む声色。帽子のつばに隠れた表情は、窺い知れないけれど。
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