口付けは愛情を確認する行為でもある。
と言うが、自分はどうだろうか。間近にある彼の顔を見つめながら、キトリーは考えていた。愛情の確認。なのだろうか。いまいちピンと来ない。よくわからない。ううん、と唸るキトリーを見て、何かを察したギルバートは少し呆れたように表情を緩めた。
「今度は何を考えてんだ、お前」
「ギル」
「なんだ」
「ギルは、キスってどういう意味だと思いますか」
「は?」
突拍子もない問いかけに、ギルバートはその眉間に僅かな皺を刻んだ。怪訝そう、というよりは戸惑っているように見えた。それでもギルバートは一度考える素振りを見せる。相変わらず優しい人だ、そう思いながらキトリーは返答をじっと待った。自らも、その答えを考えたまま。
「……まあ、そりゃあ、そういう特別なやつは好きな人とするもんだろ」
「挨拶とは違いますもんねえ」
「意味。意味、か」
繰り返し呟いて、ギルバートは言葉を切る。が、キトリーがあまりにも自分を見ているものだから気恥ずかしくなったのだろう。ほんのりと照れた顔で、けれどそれを誤魔化すようにその手でキトリーの視界を遮る。
急に目の前いっぱいギルバートの手のひら。わあ、と声を上げるもその手を退かせることは容易で、キトリーはそれを両手でしっかり掴むとずらすように下ろした。
「…………」
こうして触れ合っているだけでもなんとなく、その、愛情というもの、は感じるのだ。キスでなければならないというわけではない。
では、果たして、それはなぜ。
「意識的にしてみたら、わかるでしょうか?」
「……、……」
何かを言いかけて、けれど目線をうろつかせるだけのギルバートを余所にキトリーの甘い赤色の瞳は期待に満ちて輝く。
沈黙。言葉のように何かを語ることもなく交わされた視線にただ長い息を吐いて、ギルバートはそろりと手を伸ばした。顎を持ち上げて、赤みの差す頬で、距離を詰めて。けれどしばらくしても触れ合うことはなかった。至近距離で目線が合うだけ。それだけ。
「お前って奴は……」
「?」
「いいや、そうだな、お前はそういう奴だったよ」
不思議そうなキトリーに対してギルバートは心底呆れたようにもう一度息を吐いた。唇にかかるそれの真意が、キトリーにはわからなかった。
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