そわそわと忙しく目線をうろつかせては曖昧に笑みを浮かべるわたしを、彼の瞳は心底不思議そうに射抜く。青みの強い緑色した瞳。あの日、庭園で、とても綺麗だと思ったその色から、わたしはつい逃れようとしてしまう。
「どうかしたか」
心配してか、ギルバートは一歩近づいてその手を伸ばす。ひんやりとした手のひらが額に触れて、驚いたキトリーはぴゃっと目を開いた。顔は赤いが、熱はないな。冷静に判断する声も上手く拾えない。視界が震えて、うっすらとぼやけて、心臓が暴れ回る。思わず、キトリーは俯いてしまった。
「気分はどうだ、無茶するなよ」
「……はい。でも、その。あの、大丈夫です」
絞り出した声が震えてしまわないようにするのでさえ精一杯になって、ギルバートがくるりと体の向きを変えて先を歩き始めるまで、キトリーは顔を上げることができなかった。
見つめる背中に、手を伸ばしてみる。もう少し、一緒に。言えない言葉と触れられない指先だけが、その場にぽつんと取り残された。
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