真剣な眼差し、その横顔を眺めてシエルはぼんやりと思う。彼女、キトリー・クルーシェはこうやって、誰かのために何かをしているときほど一生懸命になる人なのだろう、と。
ううん、と唸り彼女がにらめっこしている相手は、バレットエディットだった。そこで、それに精通しているシエルが助っ人として呼び出されたのだ。
「珍しいですね、君がこうやってバレットエディットを使用するのは」
と、言うとキトリーはそうですねえ、と頷く。
彼女は戦闘中、主に接近戦を好む。……いや、好んでいるのか、銃撃戦に重きを置くメンバーを見てバランスを取ろうとしているのかは定かではないが、とにかく近接攻撃の頻度が高い。
故に自らのバレットへのこだわりはさほどないように思っていた。シエルがバレットの話をするときだって基本は、シエルが使用しているスナイパーの話ばかり。
それが今、急にどうしたというのだろう。アラガミへの対策、作戦の幅を広げるため、戦闘技術の向上……色々理由はあるのだろうけれど、なんとなく気になってシエルは彼女が見つめるエディット画面を覗き込む。
するとそこに映し出されていたのは、攻撃ではなく仲間を、誰かを守るための。
「……これは、回復弾、ですか」
「はい、そうですよー」
レーザー、つまり残留と状態異常回復の効果を併せ持つ、回復弾。それはいつか、二人で作り上げた変異モジュールを用いたものだった。
「元々、わたしは銃撃はそんなにしてないですから、だったらいっそ、回復に特化してみようかなあ、なんて思ってですね」
「なるほど。確かにアサルトであれば連射が出来る点からして迅速に量、もしくは数の回復も可能であると考えられます」
「はいっ。それに、わたしずっと前にいるので、アラガミが今誰を狙っているのかも見えると思うので、防ぐだけじゃなくてまた違った感じに守れるかもしれないなあって」
へへ、と笑う彼女の表情は、少し前に新しい強化パーツを手に入れたのだと言っていたときのそれとよく似ていた。誰かを守るために戦う人を、守るための戦い。敵を打ち倒すことだけが強さでないことを、象徴するかのような戦闘スタイル。
「……君らしい、ですね」
「あっシエル! ここに支援効果も入れてみようかと思うのですが、どうでしょうか!」
「そうですね、少し消費OPが多いようにも思いますが……」
「それなら強化パーツを組み替えて……」
だから、この人の周りに人は集まるのだろう。
一生懸命な思いは、きっと、伝わっていくから。
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