ツイッターの140字SS(を直したり直さなかったりしたもの)のつめあわせです!
「…寝てる。」見慣れた帽子が見えたものだから何をしているのだろう、と思ったら。そういえば今日は少し難しいミッションに行っていたって聞いた。疲れているのだろう。「お疲れ様、です。」そっと帽子を外し、髪を撫でる。彼が褒めてくれるときにしてくれること。今日は、わたしの番です。
何を話していたかは、実を言うと覚えていない。「いつかの帰り道、二人で手を繋いで歩いてて。」あのときの手のひらの感覚はきっと、忘れはしないと思う。「知っていますか、ギル。あのとき、たぶん、わたしは永遠を夢見ていたんです。」知らず知らずの内に、恋をしながら。
あたたかい。ふわりと浮かび上がる意識の中、頬に触れる温もりに目を開ける。「起きたか」「ん……?」視界から得られる情報すらまともに処理できていない。重い瞼は今にもくっついてしまいそう。「部屋戻るぞ」なんて声も右から左へ流して、縋るように掴んだ袖に今日もまた、甘えてしまう。
敵わない。敵うはずだってない。キス、たったそれだけ。それだけでぜんぶ、吹き飛んでしまう。疲れてたことも怒ってたことも悲しかったことも拗ねてたことも。まるでおとぎ話に出てくるような魔法にかけられたみたい。「ずるいですね、ギルは。」だって勝てない悔しさでさえも、忘れてしまうから。
ぷ。とあからさまに拗ねたふり。ギルなんて、ギルなんて。彼の膝の上、そこで頬を膨らませる。「なんで拗ねてるかわかります?」顔だけちらりと彼へと向けて問いかける。じと。困ったように目を逸らす様子を見て、キトリーは彼の方へと体を向けた。「してくれないなら、しちゃいますよ?」
見上げてくる赤い瞳に、思わず言葉を詰まらせた。なんで。その理由はよくわかっている。けど。
大事にしたい。簡単に手を出してしまえば、歯止めが効かなくなりそうで、それは全く、望むところではなくて。それなのに、甘やかな誘惑は一切の容赦も慈悲もなく、彼の理性を揺らし続けていた。
不満も不安もあまりない。子供染みてるけれど、そばにいてくれるだけで、嬉しいから。だけど、嬉しいからそれ以上を望まないなんて、ことは、なくて。「ねえ、ギル。愛してるって、言ってくれませんか?」言葉、その響きに少し憧れてしまって、なんて言ったら、彼に笑われてしまうだろうか。
自然と、彼女は心の中に入り込んできていて。抵抗する隙さえないくらい簡単に、落ちていた。あっけなく、認めて。そうしたら。彼女の行動、その無防備さ、全部全部都合良く考えてしまって。「本気にするから、あまり無防備でいてくれるな。」切実な願いもきっと、その笑顔に溶かされてゆく。
「少し、抜け出さないか。」ひんやりと優しい夜風のように、その手はするりとわたしを攫う。背中からすとんと落ちて、その中へと閉じ込められて。あれ、と思う暇すらないまま、灯りは遠ざかっていく。「ギル、どこへ…?」まるで二人、夜の闇に、溶け込んでいくみたいだ。
にこにこがにやにやに変わってく。そういう自覚。自分の言葉で、彼のその表情を変えられる。それが嬉しくて。楽しくて。「好きです、ギル。だいすき。」ほのかに赤い頬と、手の甲で隠されてるけど緩んでるのがわかる口元。「…幸せで、死にそうです?」「…アホ」「いたっ」
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