ほんとう、ほんとうは。
キスをするたび、少し、あぶない。いつもよりグッと近い距離で、そんな風に見つめられたら。熱を孕んだ瞳で見つめられたら。どうしたらいいのか、わかんなくなっちゃって。
だから彼女は手を伸ばす。繋ぎとめてと語る手を。指を絡めて、ぎゅうっと握ると、とても温かい。身体も、心も。
「ギルの手って、あったかいですねえ」
「そうか?」
「はい。ふふ」
「けどまあ、お前ほどではないだろ」
「あら、わたしの手、あったかいです?」
「ああ。こうしていると、よくわかる」
繋いだ場所からじわりと、心地よい熱が広がってく。浮かされていく。夢を見ているかのような気分に浸って、キトリーはふあ、と息を吐き出した。
「ギル?」
「ん、どうした」
「お願いがあります」
「おう」
「このまま、手を繋いでてほしい、です」
ギルバートが全く躊躇う様子なく頷いた。そうして、笑みを形作るその唇をキトリーの瞼の上にそっと落とす。酷くやさしい安心感。一歩外に出れば、常に危険が付きまとう世の中だっていうのに。囲われたこの部屋の中で、この熱にどこまでもどこまでも浮かされて。ふわ、ふわ。今だけだから、なんて理性ももう、どこかいっちゃって。
「ギル、ねえ、ギルバート。だぁいすき、ですよ」
「知ってる。……キトリー、」
耳元で囁かれた低音、その言葉の続きがまどろみの中にぼやけていってしまって聞こえなかったのが少し、惜しいと思った。また今度も、聞かせてくれるといいのだけど。
擦り寄るように身体を預けて、キトリーは眠りに落ちる。温もりに包まれて。そばにある心音を子守唄に。
夢へと落ちるその狭間で、キトリーはぼんやりと思う。どうか目を覚ました時にも、隣に、あなたがいますように。それだけできっと、また、がんばれるから。
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