お前を傷つけたくはない。要約をすると、彼の言葉はそういう意味らしい。
確かにはっきりとした物言いをする人だとは思うけれど、ミノリが彼から受け取った言葉に、悪意は感じたことはない。
確かに最初は突き刺すような鋭さだと思うことはあったし、そういう意味では誤解を招きやすい言葉選びではあるが、けれど。
「ナディくんは、優しい人なんだね」
仲良くなって気づいたことなのだけど、彼はたまに喋った後ハッとした表情をしていることがある。
先ほどの言葉から察するに、自分の言葉で傷つけてしまったのではないかと心配していた表情なのだろうと、思う。
ハァ? と怪訝そうに首を傾ぐナディに対し、ミノリはくすりと笑みを溢す。
「わたしは、ナディくんの言葉、素直で好きだよ」
「な、お、オマエ、人の話聞いて……」
「真っ直ぐで、純粋な言葉だと思う!」
褒められ慣れていないらしいナディが段々とその頬を染め上げていくにも構わず、ミノリは次々と褒め言葉を放っていく。
「最近は、ナディくんはもしかしてこういうことが言いたかったのかな? ってちゃんと分かるようになったからね、だからナディくんと話をするのがとっても楽しいんだよ!」
「わ、ワカッタ! だからもうヤメロ、バカ!」
耐え切れず、ナディはミノリの口を手で塞いだ。けれど、次の瞬間には慌てて手を離し、その勢いで半歩後ろへ飛び退く。
罰が悪そうに目線を宙に漂わせながら、喉を鳴らすように言葉にならない声を上げる彼の様子を見て、ミノリはおかしそうにころころと笑った。
「笑うナ」
「ふふ、ごめんね」
「ったく……オマエ、人の話聞いてて流してるダロ。聞かないヤツも面倒ダガ、聞いてて聞いてないってのほんと性質ワリィ……。あ、別に、」
「話すのが嫌って言ってるんじゃないでしょう? なんとなく、わかるよ!」
「……ホント、オマエと話してると調子狂うナ」
苦味を含んだ笑みながらも、そこに嫌悪感は一切感じられない。それは、彼女の言葉を肯定しているにも等しい。
なんて、希望だけど。そう思いながらもミノリは少しだけ自惚れに浸る。
笑みと共に向けられる優しい視線に目を合わせて、僅かに早まった鼓動にほんのりとその頬を染めながら。
×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -