小指にそっと触れるものがあった。雑貨屋の商品棚を熱心に眺めていたアーサーがそれに気づいたとき、同時に、彼の頭は理解する。それは隣にいたフレイの手のひらだった。それが、控えめな様子でアーサーの小指を掴んでいる。
それはまるで幼子のような初心さだ。けれど、だからこそその行動は的確に、恋人の胸の内をくすぐった。たまらずに名前を呼ぶ。フレイさん。すると俯くように、或いは顔を背けるようにして足元を見ていた彼女の視線が、ゆっくりとアーサーの方へと寄せられた。小指の先に絡めた手に、ほんの少し力を込めながら。
「すみません。もしかして、退屈にさせてしまいましたか?」
「いえ、そんなことは……! 楽しいです、とても!」
「……そうですか、それなら良かった」
反応を期待した訳ではないが、予想よりもずっと必死な様子で言われたものだからそれが嬉しくなって、アーサーは顔を綻ばせる。――本当にかわいらしい人だ。そんな思考を理解したのか、フレイは小さく喉を鳴らしながら顔を赤らめた。落ち着きをなくした自らを宥めるように、唇をきゅっと結んで。
「フレイさん」
「は、はい」
少し緊張した気配を悟って、アーサーはその所作を普段よりいくらか丁寧にさせる。元よりそのように教育はされているが、これは礼儀のそれではない。だってこれは、どちらかといえば下心なのだ。どうか、これから彼女にすることをゆるしてほしいのだと。そういうことだ。
「少し失礼します」
小指に絡まった彼女の小さな手を、アーサーは指先でそっと開かせる。まるで蕾んだ花片に触れるかのように優しく。そうして今度は、自身の手のひらで包むように握った。
「握るのでしたら、こちらの方が。……ね?」
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