リュカさんはきっと、愛情をめいっぱいに注がれて生きてきたのだろう。そういった記憶がない自分でもそう感じるほどに、彼からの愛を感じるたびに、アリスはそう思った。
幼い頃に離れ離れになった兄も、ずっと親代わりとして一緒に暮らしている師匠のパルモも、リュカの話に出てくる人たちはみんな温かかった。その温かさこそがリュカにとっての愛情の原型なのだろうと推測に容易い。だって、その人たちの話をするときの彼はいつだって愛おしむように優しい目をしているから。
あの人は愛という感情を知っていて、愛されるということを知っている。
だから──だから私もいつか、あの人の愛情の一部になってみたい。
ふとそんなことを考えて、うわ、と思った。なに、何、この感情。照れる。照れるというより恥ずかしい。自分の中の感情の、その大きさに気づいて自分で恥ずかしくなった。
アリスには記憶がない。だから色恋沙汰というものには正直疎いし、恋人になったからといって特別に何か明確な線引きができるというわけでもない。知らないことは、しようがないのだ。だからお付き合いというものに対して特別に望むものがあったわけではなかったはずなのだけど、どうやら、そんなことはなくなってしまったらしい。
「私は……」
自分がそうされているように、内にあるこの気持ちであの人を満たしていきたい。
彼の大切な人たちのように、あの人の優しい言葉を向けられる人になりたい。
そうしていつか、あの人の心の一部になれたならいいのに。
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