わたしの当たり前は、そこにはもうなかった。
ずっとずっと遠い人だと思っていた。
とってもまじめで、だからすっごく厳しくて、大きくて、むずかしくて堅い言葉をたくさん使っていて、いつも上を見上げていた。
えらい人で、それで、えっと、それだけだった。
わたしのおともだちはいつもふわふわとしていた。
だからわたしの言葉はぼんやりと虚しく響くだけ。壁にぶつかってはじけちゃうシャボン玉みたいに、宙を漂うだけ。
いってきますとただいまの間はずうっと、それだけ。
だったのに。
時間にしてみればほんの一瞬。まるで絵の具を水に溶かしたみたいに、わたしの世界は急に鮮やかに色づいた。
遠いと思っていた世界は実は目の前の出来事で、ふわふわはそこにはなくて。
投げかけた言葉は、大きな手のひらに受け止められた。どこにも消えてなどいかなかった。
わたしの言葉はその瞬間、確かにそこに存在できたのだ。
それが、そんな日常が、わたしはとてもうれしかった。
だから目を覚ました時そこにあなたがいて、わたしは酷く安心したのだ。
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