全く情けない話ではあるが、満艦飾マコの夢を見たのだ。
あの日、盃を割って挑んだはずのあの日、彼女はCOVERSに捕らわれたまま行方が分からなくなった。
考えても仕方ないとはわかっていても、そう割り切ることがどうしても出来ずにいた。
巻き込むつもりなど毛頭なかった。仮にあの場から遠ざけようとしてもあの少女は友人から決して離れはしないだろうことも、理解していたつもりだった。
もしも、あの時自分がサポートなど頼まずあの戦地から無理矢理にでも遠ざけていれば。あの時もっと早く彼女に手を伸ばしていれば。あの糸を切れていたならば。そればかりが思考の渦の中でぐるぐる巡っていた。
……目の前で、助けてと叫ぶ彼女の手を、取ってやれなかった。守ってやるべき存在の、無星で無力な少女を、守れなかったのだ。
その事実がどこまでもどこまでも重たくのしかかってきた。
夢の中の彼女は、いつものような快活さ溢れる表情ではなく、どこか何か言いたげな含み笑いをこちらに向けていた。
何を言いたかったのかは、正直わからなかった。夢で曖昧だったからか、本当に理解が及ばないものだったのかも、わからない。そもそもあの彼女は夢の中の存在なのだ。本物ではない。そのはずがない。ないのだ。
そうして目を覚ますと、そこに広がるのは段々見慣れてきたヌーディスト・ビーチの基地。それを見た瞬間、彼女がいないという現実に戻ってきたのだと実感せざるを得なくて、胸がギシリと痛んだ。
「満艦飾……」
名前を呼んでももちろん返答はない。声は、その名前は、空間に響いて霧散するだけだった。酷い虚しさが溢れる。
生きているはずだ。きっと、またあの無駄に元気を詰め込んだ声の「おはようございます」も聞けるはずだ。戦う力も意思もないのにただ友情の為に声を張っていたあの姿を、見せてくれるはずだ。
「くそ……っ」
様々な感情でごちゃ混ぜになりながら、そこから生じた行き場のない焦りに思わず呟く。
寝起きで下ろしたままの前髪をくしゃりと握り、目を閉じる。呼吸を意識する。気持ちだけ先走っても仕方がない。だけど必ず、彼女は救い出す。救い出さなければならない。
がまごーり先輩。
少しだけ懐かしい声を思い出してから、蟇郡は開いたその目に闘志を湛え、その前髪を掻き上げた。
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