「満艦飾」
小さくてあまりにも非力で、だが彼女はどんな強い向かい風でも決して自らの信じる道から目を背けはしないだろう。そんな心意気にどうしようもなく惹かれてしまうのだ。大人になりきっていない、だからこそとても眩しい真っ直ぐなその思い、その言葉、その笑顔に。
この腕を伸ばして閉じ込めてしまえば、手に入るだろうか? 答えはきっと否だ。彼女のことだ、いつの間にかするりと抜けていってしまうのだろう。そうしてまた、突然現れてはあの鈴が鳴るようなころんとした愛嬌のある声で俺を呼ぶのだろうか。「蟇郡先輩。」どうか戦火に掻き消されてしまわないように、そう思うけれど、どうしてだかその声はそれすらも越えていってくれるのではないかとも思ってしまうのだ。どんなに力があっても決して手に入れることの出来ない強さが、確かにそこにあった。
「大丈夫です、」
だって流子ちゃんがいるもん。そう言う彼女の瞳はどこまでも透き通っていた。
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