ヘイ、紳士淑女の皆さん!

九彩江のスター、メイホンだ!
今日も笹がうまいぜぇ!

おっとこんな山奥に。人間がくるなんてまた、一体どうしたことだ?
ここはパンダの領域だぜ、でていくこったなあ坊ちゃん!

んおお? 坊ちゃん王様してんのか?
言われてみりゃあ確かに、あの王さんの面影あんなあ。

はっはっは、この癒しのモフモフぼでぃが気に入ったか。
そ、そんなに気に入ったか…そ、そうか…そこまでか…
生活に癒しと潤いが足りてないんだな。ま、笹でも食って元気出せ、な?
第六公子なのに押し付けられて、王様稼業も大変だな





ヘイ、紳士淑女の皆さん!

九彩江の癒し、メイホンだ!
今日は九彩江を出張して藍州関所まで来ている、というのも、あの王様坊ちゃんのご希望あってだ!

んんん坊ちゃん、癒しとして貴陽にまでついていくのは構わないが、笹はちゃんと貰えるのか?
なぬ、飼うだと! こちとらみんなのマスコットキャラだぞ! それを飼うなんて…いや、王様に飼われるってのはもしや、九彩江だけとはいわず彩雲国公認のマスコットになるということか?
俺はみんなに愛されてしまう存在らしいからな、国公認なんてこともあるのか、そうか。ふ、ふ、ふ。俺の愛らしさが怖いぜ…

ぬ。なんだこの腹黒そうな男は。
兄上? 王様坊ちゃんの兄ちゃんなの、こいつ?
まてよ、こいつどこかで…ああ、第二公子じゃあないか。目の形なんて母親と瓜二つだぜ。ひゃー、男に生まれたのは勿体無いな。女だったら、さぞ美女だったろうに。

ちょっ、おまっ、まっ、今なんてった!?
この俺を、置いてらっしゃい!? 置いていらっしゃいだと!?
ここまで連れてきておいて!?

なにおう第二公子め俺の国公認マスコットキャラクターの夢を邪魔するか。ちょっと待て、王様坊ちゃんそこで諦めるの?!諦めちゃうの?! どうしてそこで諦めるんだよそこで!

あふん。

……お、俺はほら、九彩江のアイドルでスターでマスコットキャラクターだから?
はい。山に帰ります。お願いだから実力行使はやめてください。

…………はーっ、腹にあんな黒いもん持ってるやつが近くにいたら、そりゃ癒しも欲しくなるわな。王様坊ちゃん…頑張れよ…





ヘイ、紳士淑女の皆さん!

九彩江の観光名物、メイホンだ!
今俺は、どういうわけだか、貴陽行きの荷車に積荷とともに乗っている。

腹黒第二公子に置いてらっしゃいなんて言われて置いてかれた後、しばらくしてから王様坊ちゃんがこそこそとまたやってきたのだ。「やっぱりこっそりつれていーくーのーだーあー」っとか言ってたが、意外と行動派だな、王様坊ちゃん。見つからないようにしてくれな、本当に。

……見つかった。見つかってしまったぞ! よりによって貴陽に着いたってとこで!
ちょ、腹黒第二公子がおかんむりじゃねえか。
結局、半月後藍州に行く商隊があるというので、それに任され九彩江までかえされるということになった。だからほら、半月は貴陽にいんだから、ベソかくなよ王様坊ちゃん。





ヘイ、紳士淑女の皆さん!

貴陽に滞在中の九彩江観光大使(非公式)、メイホンだ!

はっはっは、王宮生活は最高だな! 女官にモテモテ、俺様の可愛さは国も傾く勢いだぜ! 目下のライバルは、もふもふ髭がチャーミングな仙洞省令尹羽羽殿。これがなかなか強敵だ。

俺の最近の楽しみは、夜の王宮巡りだったりする。この間は刑部で藁を貰った。縛ってあって食べやすかったし美味だった。
今日は兵部に来てみた。どうやら酒盛り中らしかった。

おう飲め飲めと気前よく注いで貰ったものだから、思わずたくさん飲んじまった。ひっく。
あ〜気分がいい。しかし暑いぜえ、ここは。毛皮脱いじまいたいよお。夜風にあたるかな。

ふらりふらりと出てきたのは、どっかの庭だ。ついつい遠くまできちまったけど、本当にここはどこなんだか。
空を見れば、まんまるのお月さんが出ていた。紅州の月も、藍州の月も、紫州の月も。どこでみてもお月さんはまぁるいんだなあ。





ヘイ、紳士淑女の皆さん!

酔いどれパンダのメイホンだ! ふいー夜風が気持ちいいぜえ。

そんな俺は今、あり得ねえ事象と対面していた。酔ってるせいだか、なーんか見えやがるんだ。いや、まあな、知った顔ではあるんだが。宙に浮いているやら、記憶の中のその奴の年齢と見た目が一致してないやら、おかしいことが満載なのだ。

ひゃー、瑤旋じゃん。なんでそんなに若いの。

お前パンダになっとったのか、って。そういうお前は、やっぱ人間じゃなかったのか。なになに、それ。幽霊?

へえ、よく知ってるな。そうそう、あの王様坊ちゃんに連れられて。

紅州に連れてってくれるって? いや、そりゃ確かに有難い話だけど、え? 何お前、なんでそんなに親切なの? えっ、気味悪っ。

梅の良さって、お前のいうのは食べるばっかじゃん。俺は花を愛でたいの。梅は慈しむものなの。

引っ掻くも何も、すり抜けるんだから別にいいじゃん。というか、やっぱりこいつ人間じゃない!

はー、もう全部酔って見た幻覚だとでも思ってしまいたいぜ。現実っぽいけど。
人間からパンダになったんだ、もう大抵のことには驚かないだろう、なんて思っていたのに、この世は未知なる不思議で溢れているのだなあ。

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梅の花が好きなパンダの話
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