「賭け碁が流行ってるみたいだな。主に黎深と関わりある場所で」
「……そうですねえ」
パチリ、と碁石が木を打つ音が響く
「悠舜はこんな呑気に俺の碁の相手してていいの?」
鳳珠が筆を滑らせる、さらさらという音がする。
「少し休憩ですよ、休憩」
「そっかあ」
先手が俺だったので、盤上はまだ俺が有利だ。…でも、悠舜だしなあ
「ここで一つ、私達も賭けをするのはどうです?」
「え、俺賭けるものないよ?」
「ふふ、私の質問の答え一つ、というのでどうです?」
「何聞く気なんだ…」
女装癖あるでしょう?なんて聞かれた暁には俺お嫁にいけない、じゃなくて表を歩けない。
「それは私が勝ったら言います。櫂兎は何か欲しいものやお願いないんですか? できる範囲で叶えますが」
「うーん……勝ってから考える」
「今ひとつ燃えませんねえ」
ふふ、と悠舜は笑った。
だって思いつかないんだから仕方ない。
「では、取り敢えず賭けは成立でいいですね」
「うん、まあいいよ」
ちなみに現代囲碁なら先手は有利ということで、何目半か後手にハンデがある筈だ
だから俺の方が若干有利に始まったのだが。
悠舜は流石、百戦錬磨な軍師。攻め込まれ切り崩されそうになるので必死に防衛する。ヒカルの碁でも読んでる気分だ
しかもこれでもかというタイミングで早打ちのリズムになる。ペースが乱されそうになるのを堪え、じっくり考え打ち返す。時間制がなくてよかったとしか思えない。俺はひたすらじっくり考えて打った。どんな手を打っても悠舜はにこにこと表情を崩さずにいるので、俺は落ち着いてはいられない
そして結果というと
「うわあ………持碁………」
見事な引き分けである。
「勝てると思ったんですけどねえ…櫂兎、見たことのない打ち方でしたから策に引っかかっては貰えませんでしたし……」
ふむ、現代囲碁のセオリーとは何かと違うらしい
「どうしましょうか、賭けの賞品」
「賞品って…」
表現が何か不思議だ。
「どっちもなし、どっちもあり。どちらでもいいですよ」
「うーん、あった方が楽しいよな。ありで!」
「ふふ、櫂兎の賞品は何希望ですか?」
「……うーん、考えとく。
で、悠舜のしたい質問って?」
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bkm