青嵐にゆれる月草 11
「華蓮ー! 余は、余は、会いたかったぞー!!」


うるうる、と瞳を潤ませ、昔のように飛びつく劉輝を、俺は衝撃をいなしつつ受けとめる。沙羅ちゃんの数々のアタックを受けてきた経験が、まさかこんなところで活きるとは。
とはいえ、体格差ばかりは埋められず、逆にこちらが劉輝に抱きとめられる形になってしまったのだが。貘馬木殿のように完全に勢いを殺しきるのはまだ無理らしい。


「華蓮が小さくなったのだ!」

「まあ! 劉輝様が大きくなられたのですわ」


くすくすと笑っていると、劉輝は体勢を立て直すのに手を貸してくれる。その瞳は優しい。
こんな風に気が回せるようになって…! 櫂兎としては気付けなかった劉輝の成長っぷりに小躍りしてしまう。


「では、参りましょうか」

「おっと、その前に。紹介する者達がいるのだ」


劉輝の後ろに隠れて見えていなかったらしい、彼の背中からひょっこりと、一人の少年と、少年に背負われたモフモフが現れる。――リオウと羽羽だ。
彼らが名乗る間、俺は、魅惑のモフモフから目が離せないでいた。


「羽令尹につきましては、お噂はかねがね伺っておりました。不思議と、お会いすることがございませんでしたけれど、こうしてお知り合いになれたこと嬉しく思いますわ」


モフモフ、低身長、その上「ですぢゃ」口調。女官達が騒ぐわけだ。どこぞの狸爺に見習ってほしいくらいの、癒しと愛らしさの集合体ではないか。今なんて、リオウに背負われて癒しのマスコット度が倍増だ。


「それで今日はな、リオウと華蓮と余の三人で話そうと思うのだ!」


羽羽は仕事が立て込んでいるということで、今日は挨拶にだけ訪れたらしかった。残念だ。非常に残念だ。モフモフを名残惜しみながら見送る。


「驚かないんだな」


その台詞で、俺はリオウから鋭い視線が飛んできていたことに今更気付いた。


「あら、何をですの」

「仙洞令君が、まだ子供であることを」

「その役職は、普通の者では務まりませんもの。それよりも私は、劉輝様との関係が気になりますわ」

「うむ、仲がいい、と余は思っている!」

「まあ、お友達ですわね! よかったですわねえ、劉輝様。お友達ですわよ、お友達!
劉輝様に、お友達…。私もほっと致しますわ。劉輝様は、近い年頃の子と遊ぶという経験なかったでしょう? そればかりが気掛かりで」

「ちょっと待て、華蓮、リオウとはその、友のようなものだが、近い年頃って何だ近いって! 余は今年で21だぞ!」

「私がお話ししているのは、心の年齢のことですわ」

「酷いのだー!」

「うふふ、嫌ですわね劉輝様、これは褒め言葉でしてよ? 子供心を忘れぬ、いいことではありませんの」

「そ、そうか? いやでもなんか、子供って言われてるみたいだぞ?」

「私にとって劉輝様は、いつまでも子供のように可愛らしくて、愛おしい方ですわよ」

「やっぱり子供扱いなのではないかー!」


ぷんすこぷん! と頬を膨らませる劉輝を微笑ましく思いながら、宥めるまでがいつもの流れだ。劉輝とは、華蓮としては長く会っていなかったのに、こうしていると、昔からずっとこうしてきたかのようで、なんだか温かくてこそばゆい。
リオウは、そんな劉輝と俺のやりとりに、呆気にとられているようだった。

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空中三回転半宙返り土下座
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