拍手使用物 春色四男は(中略)(以下略)。
新年明けての羽林軍酒会でのパラレル話.
正題は「春色四男は年中無休の春であるがゆえに新春なんてもの存在しないのであって(中略)(以下略)。」
2012.02.25




覚悟を決め、悪鬼巣窟の年始の羽林軍酒宴にきてみれば入口付近で泥酔気味の男に足を掴まれた


その者は何度か絳攸の近くでみたことのあった男だった。名は櫂兎といったか。


「貴方文官じゃないんですか…」


何故羽林軍の年始酒宴にいるのだ。


「うっせ……冗官処分受けたからフラフラしてたら飲んでけって言われたんだっつーの」


「………」


妙に馴れ馴れしいなこの文官。しかし吏部はクビになったらしい。一体何をしたのだろうか。


と、男に「まあ一緒に飲もうぜ」などと言われては手を引かれ、座らせられては猪口を持たされる。
クビになった理由でも聞かされるのかと思えば男の口から出たのは気になる女性の名だった


「ったく珠翠にちょっかい掛けやがってこの常春坊ちゃんが…いっつも後宮にきては華蓮殿華蓮殿って言ってたしぃ、今は珠翠って…わざわざ忙しい筆頭女官困らせて何が楽しいんだぁっつの! 常春花畑春色桃色…はツインズになってまずいのか。ま、昔っからそういうとこだけはかわんないねー」


「…珠翠殿や華蓮殿をお知りなんですか? っていうかそんなことまで知ってるなんて…どんな関係で……」


「珠翠…あのこは娘みたいなもんだよ。俺の癒しぃ」


年の差そこまでないであろうのに、娘とは。妹ではないのか。まあ、恋人と言われないだけよかったが


「んーで華蓮は…」


「華蓮殿は……?」


後宮を退いてからは全く足取りをつかめなかった彼女のことが分かるかもしれない、と真剣になり次の言葉を待つ。勿体ぶったように間があく。やがて男は口を開く


「秘密」


「はあ? そこまで引っ張っておいてそれはないでしょう!」


「えー、華蓮がよく言ってんじゃん。乙女には秘密が多いもんだってえ」


「聞いたことありませんよそんなこと」


すると男はそうだっけと首を傾げ、まあいいやと笑った。


「飲めー、青年ー。奢りだー」


「いや、私が提供してるんですが」


「細かいことは気にすんなー」


そうして酒をつぎ、その後マジマジとこちらをみてくる男


「……なんですか」


「いや、ね」


ポツリと男がこぼす


「幸せの青い鳥、ちゃんと珠翠の掌にとまってやってね」


「え……」


一体何を言ったのか考える間もなく男は立ち上がり叫んだ


「仕事と私事わけられねえバカなんかもう知らん!そもそも私事な理由ばっかで仕事決めてサボるとか!出来てもしないなら出来ないと一緒だろうがくっそ!!そんなとこも憎めないで友人続けてる気でいる俺も俺だ!」


「あ、あのお…?」


「なんだ?文句あんのか?」


ガンをとばし、そして他を見渡してさらに言った


「文句がある奴かかって来い! 一気にきても構わん! 優しく弄んで捨ててやる!!」


その言葉は悪女じゃないんだからと思っていれば酔って面白半分の武官たちが次々と彼に飛びかかるではないか
流石に精鋭ぞろいに文官一人が襲われるのは危険だ。酔った勢いで手加減忘れて大怪我では済まないかもしれない。武官たちをおさめようと、剣を抜こうとした。しかし


「……え」


次の瞬間、ただ目の前の光景に呆気にとられた。


襲いかかった武官たちは気づけば床に叩きつけられており、文官ただ一人が悠然と立っていた。


「んー、羽林軍もしかしなくとも弱体化してる?」


手応えがない、と文官が呟く。その言葉から、信じたくはないがこの光景が彼一人の手によるものだと分かった。


やがて文官がぽんと手を打つ。


「みんな酒で酔ってんのなー。つまり今どっかから王に反旗翻す大軍きたらおっそろしーことなると」


大軍でなくとも彼一人で充分脅威である。というか、腐っても酔っても武官。それを自分も酔っていながら瞬時に叩き伏せたこの文官は一体――――


そこにいつも感じ慣れている、しかしピリリと後ろ髪引かれるような痛いくらいの殺気


「うぇ…白ちゃん黒ちゃん」


「ちゃん言うなって言ってんだろ」


「………。」


「だって俺、2人と戦って俺が勝てたら白ちゃん黒ちゃんって呼ぶからねって言ったじゃんー
しかも2人一気にきていいって言ったのに向きになって1人ずつかかってくるからさぁー」


なっ、2人の大将軍に勝った?!
しかも同時に相手する気だった!?


「うっせー! あんときは武官なってすぐだったろ!
くっ、今あんときの決着つけてやる!」


この文官、白黒両大将軍が武官なって間もなく知り合ったということは、相当両大将軍とつきあいが長いということだろう。何があったんだ本当に…


「いやいや、あのときは俺が勝ったじゃん。再挑戦臨むならこっちが勝ったときにいい条件つけてくれないとー」



「………。」


「え! 白ちゃんを白ぴょんってよんでいいって!?」


「何かってに俺の呼び名条件にしてやがる!!」


「白ぴょん……うさぎみたいで可愛いね。肩の虎もかたなし〜って? でも俺、白ちゃんは白ちゃんでいいしなぁ……」


そこで文官は、いいこと思いついたというふうにニヤリと笑った。


「白ちゃんは肩の虎を俺に3日貸すこと、黒ちゃんは雪が降った時一緒にかまくら作ることー!」


「………負けたくなる」


「ばぁっ、んだよ、こいつ倒して汚名返上すんだろ!?だから嫌々お前と共闘するってのに」


「んーふふー、さー、その条件でよければ2人一緒にどうぞー」


そして一斉に剣を抜き動いた両大将軍と、素手で相手した文官、一瞬にして決まった勝負に


「………彼、何で文官」


春色四男は呟いた






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空中三回転半宙返り土下座
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