想いは遥かなる茶都へ 17
櫂兎はひょいひょいと梯子のぼっていく。霄太師は烏に戻り、はばたいては櫂兎の背に乗った。


「あ、ずるい」

「ええじゃないか、減るもんじゃないし」

「口調戻った」

「…………」


これだからこいつは。気が回りすぎると霄太師は溜息ついた。


「あ、地上みたい。階段ほど酷く長くなくてよかったぁ」


とんとん、と天井…この場合地上か?を叩き櫂兎は笑う。よくもまあ燭台持ちながら梯子のぼれたものだと霄太師はふと思った


櫂兎は燭台に息を吹きかけ、灯りを消した。それを背負う荷物に詰め込み、天井をぐいと押す。音させ開き、光がさす。久々の日の光に思わず目を瞑った。


「……っと」


出た先は州試でお世話になった離れの部屋。内装全く変化ない部屋に懐かしさおぼえて櫂兎は笑みをこぼす。


「さて、俺らはこれで立派な侵入罪なわけだが」

「阿呆そんなこと言うとる場合か。さっさと出るぞ」

「はいはい。ところでいつまで肩乗ってるつもり?」

「飽きるまでな」

「……」


その不機嫌な顔は退けという意志をありありと示していたが、霄太師は気にせずちょこんと肩に乗ったままでいた。


「……おい、早く出ないのか」

「いや、このまま出て行ったとしても、裏口にしても表にしても、この屋敷母屋付近絶対経由するようにできてるんだよ」


壁やら屋根やらこえるなら話は別だけどな、と櫂兎は言い、霄太師の羽をじぃっと見つめた。


「手羽先…」


流石に五日間芋時々干し飯生活はあれだったらしい。だが肉恋しいからといって見られると命の危険しか感じない


「とにかく、母屋に近付くってことは、人と遭遇しやすくなるってことだろ。そんなところで不審な男がうろついてたら即捕まる」

「……ふむ」


と、いきなり櫂兎は脱ぎだした。振り落とされた霄太師は丸い目を更にくりくりと丸くさせ、何をやっているんだと呆れ櫂兎を見る。
しかしそれも櫂兎が次に着はじめた服で納得に変わる。女装――侍女のふりをしていくらしい。それならば彼のことだ、得意だろうしきっと何とかなるだろう


「宮廷のとはさほど変わらない様式だと信じよう…」

「服なんぞどれも同じだろ」

「…………それ、お洒落してる女の子の前では絶対言うなよ」


やけに真剣な顔して櫂兎が言うので、びくつきながらこくこくと頷くのだった。

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空中三回転半宙返り土下座
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