高楼の天辺で、霄太師、宋太傳、櫂兎の三人は月を肴に盃を傾けていた。
「霄、この梅干し壺、あけていいか?」
「俺も開けたい!」
宋太傳の問いや櫂兎の言葉に霄太師は首を振った。
「駄目じゃ」
「ケチー! 偏屈爺の気が出てきたんじゃね?」
「爺言うな! 櫂兎ももうよい歳じゃろが!」
「へっ、俺はまだうら若い乙男…あれ?」
首を傾げる櫂兎を横目にぽつりと宋太傳はまた問う。その目は確信した事実確認する目だった
「――霄。あのニセ指輪、お前が作って蔡尚書のところへ放りこんだんだろう」
「当たりじゃ」
あっけらかんと笑った霄太師に、宋太傳は呆れ返った。櫂兎をみやるが動じもしない。流石櫂兎、分かっていたらしい。と、いきなり櫂兎は霄太師を狙い脚を振り上げた。
「ちぇすとおおおお!」
「ふぅんっ!」
頭上から振り下ろされた脚――かかと落としを横にとびよけた霄太師に夢主は軽く舌打ちしては次々攻撃を繰り出す
「爺のくせ跳ね回るなあああ」
これはどこのカンフー映画だと突っ込みたくなるような攻防が繰り広げられる。一見櫂兎がはちゃめちゃに霄太師を攻撃しているだけのように見えるが――
(櫂兎の奴、たまに壺を見て……本命は壺か。何とか霄の気を逸らそうとしてやがる)
そこで上手く櫂兎が霄太師の足を引っ掛け、滑り込み壺に手を伸ばした――が、
「全く、油断も隙もありゃせんのー」
足を引っ掛けられた筈の霄太師は平然と壺を持ち上げ位置をずらした。櫂兎の腕は空を切る
「ぐっ……無念……」
がくりと床に倒れこんだ櫂兎をみて霄太師はふんと鼻で笑った。
(……櫂兎の仇討ちすっかな)
死んでないけど、と自分に突っ込みつつ宋太傳は霄太師を騙し討つことにした。
「――あッ、あんなところに縹英姫がっっっ」
「ななな何ぃっっ!?」
「どりゃーっ!」
本気で血相変えた霄太師の隙をついて、宋太傳は梅干し壺を奪い取った。
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