「よーしこれで何かと一区切り!
安心して戸部の手伝いに行け――むぎゃっ! な、なにすんの白ちゃん!」
らんらんと跳ね回りたいような気分で歩いていれば、ふんずと首襟掴まれ引っ張られる
「白ちゃん言うな! 単刀直入するぞ!」
「人に向けてすることじゃねえ!話をして?!」
ぐっさりやられたらたまったものじゃない。話の切り出しが人体切り出しになってしまう
「お前、ここ最近茶州から入った賊の話は知ってるか?」
「ああ、こんなあっついのに元気有り余ってる羽林軍の人が警備強化でうろうろしてるのって、それのせいだったよね」
「それで、だ。賊退治に――」
「だが断る」
すべてを分断する魔法の言葉を櫂兎は吐いた
「まだ全部言ってねえよ!」
「聞きたくもない! 俺は戸部行って柚梨で癒されたいんだ!んなむさ苦しい集まりと一緒にやってられるか!!だいたい人手そっちは足りてるだろ、流れ着いた賊達って親切な誰かさんが縛り上げてくれてるんだから」
雷炎が鋭く目を細めた。
「なぜ知ってる? まさかお前が――」
「まさか、そんな面倒なこと自分からやらないさ。隼凱からきいたのー」
へらっと櫂兎は笑ってそれじゃあ、と去ろうとする。雷炎にはひきとめる言葉がなかった
戸部近くの回廊で、秀麗扮する秀くんをみかけ微笑む。
「よくやってるみたいで、お疲れ様。初日に戸部付き添えなくてごめんな、迷って遅れちゃったろ?」
「え、あ、櫂兎さん、ええと、私がここにいることを……」
「うん、だって俺李侍郎付きの雑用係だし?知ってる知ってる」
ぽふぽふと頭を撫で秀麗をみていれば、どこからか殺気を感じ顔を上げる。秀麗の後ろ、三番目の右の柱の後ろに黎深がこちらを視線で射殺さんばかりに見つめてきていた。嫉妬全開の顔に苦笑する。
「そういや、今からどこへ?」
「尚書から言付かった書簡届けてから、府庫でこの本返して三冊借りてくるよう言われてます」
「へえ…その借りる本、もしかしたら通りかかった親切なおじさんが持って行くの手伝ってくれるかもね」
「……はあ」
何故親切なおじさん?と不思議そうな顔する秀麗の後ろにいる黎深とアイコンタクトを試みる
黎深はそわそわと戸惑っては百面相をしている。はあ、と溜息つき秀麗に「引きとめてごめんね、頑張ってら」と声掛け彼女が去ったのを確認したら、黎深に近づき、彼を真っ直ぐみた。
「尚書、秀麗ちゃんが重い本運ぶことになりそうです。手伝ってあげてくださいね。
それきっかけにお話して親密度上げるんですよ!」
ぐっと握り拳に力を入れれば、黎深は不服そうながらこっくりと頷いた。
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