黄金の約束 02
「絳攸、軒に吊るしてた鶏、暑さにグッタリしてたぞ」


どさっと他部から回ってきた書類を中央卓に置き、櫂兎は絳攸に告げた。王が仕事をするようになって、まともに各部も機能し動き出しているのだ。当然、仕事もドカドカと増え、吏部に転がる人も増えた。
その上この夏の暑さ――さすがの櫂兎も普段より仕事の進みが2割減だった。


「鶏よりここにいる官吏のがぐったりでしょう」


疲れた声で絳攸は侍郎関係の仕事のみ拾い、尚書室方面へ向かう。


「……絳攸、王の執務室なら逆だ」


「んなっ!」


いやいや、絳攸。そこ、驚愕の新事実!みたいな顔するとこじゃないから。どうして俺を疑う目で見るかな……


「丁度執務室まで散歩にでもと思ってたんだ、一緒にいこうぜ」


ぐいと腕を引っ張り絳攸を廊下まで連れ出せば、「いつ吏部の扉は移動したんだ」などとブツブツ言いながら、またふらりと目的地と逸れる方向へ行こうとする。その度さりげなく正しい道を示すよう、少し前へ出て歩くのだ。……上司より前へでて歩くのはあんまりなあ…


「そうそう、戸部に『例の話』は通しておいた。人手不足だから助かるってさ」


「……! そうか……」


嬉しそうな顔をする絳攸に、うんうんと櫂兎は頷いた


「ちなみにここが執務室、それ以上先に進んでも厠しかないぞ」


「…………」


櫂兎は執務室の扉を開け、ちょつちょつと手をこまねかせる。
その言葉にぷるぷると震え踵をかえし、絳攸は執務室に入った。


「あ、棚夏殿」


中で壁にもたれかかっていた楸瑛が、扉を開け持つ櫂兎に声掛ける。


「今日は秀麗殿のところで絳攸や私も夕餉をとるのだけれど、棚夏殿はどうです?」


櫂兎は暫く考える仕草をしてから「遅れていくことになりそうかな…」と言った。


「忙しいんですか?棚夏殿が珍しい」


「なんだかそれ、普段仕事貰えない駄目な人みたいにきこえるぞ……
んーと、ちょーっとやりたいことがあってな」


へらり、と櫂兎は笑った

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空中三回転半宙返り土下座
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