「劉輝様には、会われないんですの?」
俺が帰り支度をしているのを見て珠翠が問う
「今更どのツラ下げて会えばいいかわかんなくって。いつか、ちゃんと会わなきゃなって、謝らなきゃなって思ってるんだけど。今はできない、かな」
王位争い終結する頃には逃げるのをやめにしたいとは思っているが
今は俺の中でも整理がついていないし、何より劉輝は優しいから、謝れば何も言わず許してくれるんだろう、俺が彼を1人にしたのにごめんの一つ二つですんなり元どおりになろうなんて卑怯な気がして。
だからまだ会わない、会えない。
今日は帰って、明日のために楊修への言い訳を考えなければならない。……そうだよ、いい言い訳ないものか、一月ほどって言ったんだから一月過ぎてるけど誤差範囲でって言うか…うん、そうするか
思いついたところで邸前につく。
着替えを終え、ふと思いついたことを実行しようと、切り刻んださつま芋で甘く炊いたご飯を用意しておにぎりにする。それを竹の葉で包み風呂敷に仕舞う。向かうは邵可邸だ
その庭の変わりように、俺は予想していたとはいえひどく衝撃を受けた。木は皮さえところどころ剥がれ、葉ひとつついておらず、池の水もほぼ涸れて泥に近い
俺は家の主の姿を探す
「邵可!どこだ!?」
「……人の家に勝手に侵入して、煩いですよ」
そこにはすっかりやせ細った静蘭がいた。少し顔も青白い
「旦那様は二胡を奏でているお嬢様とご一緒です」
「…………そっ、か」
俺は作ってきたおにぎりを静蘭に託す
「ごめんな、ごめん、俺何もしなかった」
地下の米はほぼ全て瑤旋に一任でどこかへ運ばれたとはいっても、一人分にしては十分すぎるほどの米は余っていたのに。米俵送るの増やせばよかったのか。しかし邵可のことだからそれも配るだろうし
「……ここにこうやっておにぎり差し入れに来たじゃないですか」
「それは…そう、だけど…」
「久々のご飯ですから、お嬢様も喜ぶとおもいます」
痩せて細っていかにも疲れの見えるのに、それでも静蘭はそこで笑った
「……笑えるように、なったんだな」
「ええ、お嬢様のおかげです」
「そっか…」
そしてぽふぽふ頭を撫でる。髪質で、劉輝を思い出しズキンと心が痛んだ
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bkm