試されて試されて 54
試験当日、俺は原因不明の高熱に罹った


「大丈夫か…?」


「うぅん、なんかぐるぐるしてぴかーってなってほわほわしてる」


頭も鐘が鳴り響くようにガンガンと痛い
試験、まともに受けられないかもしれない


でも、



「大丈夫、筆は持てる。受けるよ」



「櫂兎…」



たぶんこの国試を逃せば俺は一生受けないだろうし

心配そうにしてくれている鳳珠たちに微笑み返し、試験会場に入った



試験用紙は、ほぼ直感や無意識で埋まっていった。筆が止まることはないが、正しいという確証もなく、半分夢見心地の回答になった



終了を知らせる鐘が鳴り、俺は水を頭からぶちまけられたような感覚に襲われた


さあっ、と血の気の引く音がする


終わった、俺
何書いたかさえも、覚えていない




とぼとぼと歩いていれば試験を終えた悠舜に、お疲れ様ですとぽんと背中を叩かれ、緊張の糸が切れてしまったかのように俺はその場に座り込んだ


ぼーっとして何も頭に入ってこない。鳳珠と黎深が肩を貸してくれるのに何とかつかまって13号棟に戻ったような記憶があるような、ないような


ただ起きてみれば俺の屋敷の俺の布団で、悠舜かららしい書置きがあった
どうやら俺はそのまま荷物も持たず動き回り鳳珠と黎深の肩を借りて家まで帰ってきたらしい。ああ、家の場所がばれた
荷物の方は体調がよくなるまで悠舜のところで預かってくれるらしい。


しかし、頭がボーっとする
何も難しいこと考えられない


ただ、試験が悔やまれて、こんなはずじゃなかったのになあと自嘲気味な笑みがこぼれた

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空中三回転半宙返り土下座
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