Punishment
戦いが近いていることを、何も言われなくてもわかるようになったのはいつからだっただろう。遥か南の大陸で騎士になったとき、いや、もしかしたら俺がまだただの少年だったときにはわかっていたような気もする。
もうすぐ戦いが始まる、と勘が告げたとき、幼い城主が出陣を願い出てきた。
予感が当たってそれに頷くと、決まって左手が疼き出す。
こいつとの付き合いは、もう百五十年ほど。言いたいこともわかるようになったが、わかりたくなかったとも思う。
お前は俺が戦いの最中に死ぬのを待っているんだろう。そして新たな宿主を見つけて、喰らって、いつもいつも満腹でいられる生活に戻りたいんだろう。
みすみすくれてやる命など、一つとしてないというのに。まったく、いつまで俺の命を「欲しがって」いるのだか。
左手に宿る、誰かの魂を喰らう紋章。手袋越しに宣戦布告した。
奪わせるものか、俺の命を。
奪わせるものか、誰かの命を。
この城はどこか懐かしい。百年以上昔の、もはやおとぎ話のように語られるかの島々での戦いで、仲間たちと共に暮らした巨大な船を思い出させる。並ぶ店には活気が溢れ、人々が笑顔で暮らす様子は、平和を絵に描いたようだ。それはかつて守ったものと重なる。
これを守るための、戦いだ。
――この紋章がある限り、戦い続ける。