Soul Eater
現在地はある軍の居城。にぎやかで活気に満ち溢れ、平和そのものである。
それでも、実態は戦争の最中だ。この城は最前線と言ってもいい。
今回は完全に予定が狂った。あの熊のような大男に付き合ったが最後、帰るタイミングをすっかり逃して、日が暮れてしまった。
僕は戦いの中に身を置きたくないのに。戦友たちは事情を理解してくれているからか、僕が帰ることを止めない。若い軍主も、名残惜しそうな顔をしながら見送ってくれる。少し申し訳ないけど、そうやって故郷に帰るのが、僕の日常だった。
テレポートをしてくれる彼女も、バナーの村までが限界のようで、流石に夜に峠を越えるのは危険だ。それで一泊していくことになったのだ。
そんな中で、近日中に一戦交えることになり、城に滞在する全員が外出が禁止になりそうだと、かつて共に戦った眼鏡の軍師が教えてくれた。つまり、しばらく城から出られないということになる。
――ああ、嫌だな。
戦いが近づくと、活気はそのままなのに、城内は刺すような緊張感を帯び始める。
雰囲気に感化されているのか、右手がいやに疼く。
僕は気づいていた。こいつは僕や誰かの大切な人を何人も喰らっておいて、まだ「欲しがって」いることに。
右手に宿る、誰かの魂を喰らう紋章。手袋越しの存在を憎む。
頼む。
僕から奪わないでくれ、僕の大事な人たちを。
僕に奪わせないでくれ、人々の大事な人たちを。
この城が好きだ。本音を言えば何日でも滞在したいくらいだ。それに、ほとんど知らない人間ばかりなのに、どこか懐かしい。活気に満ちた店が立ち並び、人々が幸せそうに笑った暮らす様子は、故郷の湖に浮かぶあの城と重なる。
だから、壊したくない。
――この紋章がある限り、ここにいたくない。