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未開の森と言っても、何故か道はちゃんとついていた。結構古くからあるようなやつが一本。ここさえ踏み外さなきゃ迷わないようなものだったので、ぼくはそこを真っ直ぐ進んでゆく。
その道はどうやら上に続いているようだった。頂上にあいつがいればいいけど。
そうしてずんずん進む。そんなに長い道ではなかった。この島意外に小さかったらしい。迷子とか杞憂だったかも。
高台についたぼくは、顔を青くしたベルドアールを見つけた。
「……やぁ」
軽く手を挙げたヤツは、巨大な蟹の鋏に挟まれてたけど。
「……なんでそんなとこにいるんだよ」
後学のために、どうすれば蟹に挟まれるのかを訊きたかった。ちなみに、どうして巨大な蟹がいるのかは無視した。どうせ産卵期とかだろうから。
「そこに真珠があって、リムへの土産にしようかな……って」
「そうか……って、蟹が真珠持ってるわけないだろ! しかもそれ真珠じゃないし、卵だし!」
妹への愛情はわかるけど、少しくらい自分のことも考えろよ……。
「だ、だって、こんなのいると思わなかったし……」
「常識的に考えろよ!」
「ちょ、静かにしないと、鋏が……!」
バカすぎて溜息もでない。武器持ってないくせに。ぼくも言えたものじゃないが。
「ちょっと待ってろ。今なんとかするから」
「は、早くしてください……」
ビビってるバカ王子の顔はちょっと面白かったけど、身に危険が迫っている人間を助けてやるくらいの良心はある。バカ王子じゃなかったらもう少し積極的かもしれない。
右手を掲げて、ソウルイーターを使う準備をする。よりにもよってベルドアールを助けるために使うとは、テッドや父さんやオデッサさんにちょっと申し訳ない。
「……サガ、今もったいながったでしょ」
「人の心を読むな!」
こいつ、昨日といい、妙なところで鋭いな……。
「一応ちゃんと助けるから
「一応!? サガにとってぼくってその程度!?」
もう放っておいていいかな。
「あーもういつもだけどほんとうっさいな! 助けるって言ってるだろうが!!」
「サガ酷い! 酷すぎる! ボクはキミと仲良くしたいだけなのに冷たいし怖いし怒るし裁き使うし!」
わーわー騒ぐバカ王子を無視して、言葉を紡ぐ。
「……我が身に宿る生と死の紋章よ――」
そのときだった。巨大蟹が暴れ出したのは。