「ほんとにすごかったんだからな!光の……キラキラが空から降ってきてさ!」
今、キラキラしているのは塔子の双眸である。
ハロウィン・パレードも無事に終わり、塔子たち四人は先に財前家へ向かった。結局夏未たちとは合流できず、先に夕食の準備をしようということになった。夏未たちを心配しつつも、帰り道はパレードで起きた事件の話でもちきりだったが。
塔子たちが家に着いて十分後くらいに、夏未たち三人がインターホンを鳴らした。はぐれたことと連絡が取れなかったことに対して、秋が注意し、反省する三人を「珍しかったので」という理由で冬花が写メを起動させた。
無事に七人揃ったところで、秋とリカを中心に料理を開始した。夏未の調味料ミス未遂など色々とあったが、かぼちゃスープを小さいかぼちゃに入れ、こんがり焼けたパイも完成した。
いただきます、と斉唱して一息ついたところに、塔子が声をあげた。
「なんか、アニメとかで妖精が通った跡ってキラキラするだろ、ああいうのが空から降ってきたんだよ」
びしっ、と塔子にスプーンを向けられて、リカは困ったように笑った。
「いや、だからな、ウチが迷子になってもうて。パレードから離れたところにおったから、それ見とらん。それどころやなかったん、な、つくし」
「え!?うん、そうだね」
いきなり話題を振られてしどろもどろになる。秋はそんなつくしを見て、直感的に怪しいと感じた。
「つくしちゃん、何か隠してない?」
「まさか!何も隠してないよ!」
作り笑いを浮かべてパイをかじる。友だちに隠し事をするのは忍びないが、今回ばかりは仕方がない。
「つくしさんは何も隠し事なんてしてなくってよ。三人で道に迷って、どこかの路地裏に入ってしまったの」
「ケータイも見なかったんですか?」
「ええ、電波があまり通らないところに入ったみたい」
涼しい顔してスープを啜る夏未だが、内心ひやひやしていた。夏未の上手いフォローに、リカとつくしは心の中で平謝りした。
「うーん、まぁ終わったことですし、仕方ないですね。来年は七人で周りましょう!皆さんは中学生活最後のハロウィンですし!」
盛り上がる春奈たちをよそに、魔女三人は黙ってしまった。もちろん来年もパトロールに回らなければならない。リカも大阪で過ごすかもしれない。
「そうだ!」
秋の声に、パレード参加組は揃って魔女たちへ手を差し出した。お決まりの言葉は綺麗に重なって、不思議がる夏未たちを柔らかい笑顔にさせたのだった。
「トリック・オア・トリート!」
20111110 終幕
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