かぼちゃスープにトマトを混ぜたような空の色を見て、「いいハロウィン日和だな!」と塔子は感嘆した。黒いローブを翻して、今やっと、かぼちゃとの奮闘を終えた秋へ話しかける。

「スープだろー、パイだろー……秋の料理すっごくおいしいから楽しみだ!」
「ありがとう、頑張って作るね!でもその前に、パレードを楽しんでからね」
「わかってるって!」

 話しながらも秋は手際よくテーブルの上のかぼちゃを片付けている。
 一番広いし融通が効くから、との理由で、財前家の台所を貸してもらっている。大きいテーブルの上には、中身をくり抜かれた小さめのかぼちゃが七つあった。スープの容器にするためである。中身はスープやパイや、ジュースに変わる。橙色の塊を素敵なご馳走にするのは、仮装パレードが終わった後、料理の得意な秋とリカの仕事だ。
 鼻歌を歌いながら、流し台で手を洗う秋の隣に、塔子は寄り添った。にかっ、と笑った塔子の犬歯は、いつもより少しだけ長い。額を全て露わにして、前と横の髪を後ろへ流して一つに括っている。

「ふふっ」
「なんだよ」
「いや、かわいい吸血鬼さんだなぁと思って」
「それ言ったら秋だって、かわいい海賊さんだよ」

 仕返しと言わんばかりに、塔子は秋の格好を見やった。深紅のジャケット、同じ色のパンツの裾は、後から黒い編み上げブーツの中にしまう。さらに同じ色のハットに、付属している白い羽根は秋が動くたびふわふわ揺れた。いつもの秋とは違う、なんというか、攻撃力が上がったみたいな、でもかわいいんだよなぁと塔子は思った。

「雷門駅に四時五十分集合だっけ?」
「うん、パレードが五時からだから……って、あと十分しかない!」
「ホントだ!急ごう秋!」
「ちょっと待っ……塔子さん!お菓子忘れてるよ!」

 かぼちゃを残して、子どもたちは出て行った。窓から見える空は、かぼちゃスープとトマトに、昏々とした紫が迫って来ている。


20111031
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