青春少女

※転生パロ/現パロ注意!!仙蔵視点
※名前変換なし






完璧な私があの男と前世ばかりか今世でまでも友人でいてやる訳は、あの頃とは違う、何故か恋に生きるこの男の何度倒れても立ち上がり、男は恋をしていればいつだって青春なんだときっぱり言い切る馬鹿さ加減かもしれん。
昔は闘いにその情熱を燃やしていた男がなんとも面白…いや、楽し…でもない、…まあ率直に言うと愉快なことになったもんだと内心笑って眺めていれば、気付けば奴は七回もその青春とやらを散らしていた。

最初の春が散った時、奴が情けなく涙を堪えながら見せに来たのは原付の免許だった。
二つ目の春が壊れた時、やけっぱちな奴に強制連行されたのは普通自動車運転免許の合宿。
何故そっちに走ったのかは今でも謎だが、当時それはもう面白くて面白くて、笑いを堪えてドライブに付き合ってやったものだ。
それから次々に青春が去って行く度に、奴はどんどん大きな車に乗り換えて、七つめの春が散った去年から2トン車に乗っている。

昔から変わらない、照れ屋でぶっきらぼうでお節介の世話好き、涙もろいが気前がよくアホだが強くて男らしい、こんないい男の魅力に気付かない女共は馬鹿ばかりだと心底思う。絶対に言わないがな。

青春を没にしたあと、決まって私を誘い海まで出かける奴は高速の料金所のカードを何の罪もないおじさんから無愛想に引ったくり、あてどない傷心のドライブに出るのが唯一、悪い癖だったな。




そんな奴が遂に、八つめの春に挑んだ。相手は笑顔が可愛らしい少女。
女は胸だと言い張っていたお前は一体どこへいった。ぺったんこじゃないか。
しかし私も今度こそはと、奴の恋愛成就を願い、この私が!!お百度参りをしてやった。これで完璧だと思いながらも、どうしても拭いきれない不安がチラつくので、こっそり出掛ける準備は忘れない。

だがしかし、この完璧な私の願いを踏み散らかして、半年経たずに電話があった。今から行くからとぶっきらぼうに告げられ、やってきたのはなんと4トン車。開いた口が塞がらないとはまさにこのことだ。

ところがなんと、助手席にちょこんと座っているのは八つめの可愛い青春ではないか。
奴は恥ずかしそうに額を掻き、頬を気持ち悪く赤く染めて無愛想に言った。

「…そんな訳だからさ、ちょっと行ってくる」

颯爽と、とは行かないが去り行く4トン車を見つめ、湧き上がる笑いを放出。
遂にやったな留三郎、これで料金所のカードもひったくらずに済むではないか。
八つめの青春少女、名前は知らんがお前は偉い。留三郎を頼んだぞ。

そんな願いを込めて振り返れば、こっそり準備していた荷物がほんの少しだけ寂しそうに太陽の光を反射していた。


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