その姿、磁石の如く

ガサガサと草の根を掻き分けて進む少女。

「ふぇぇん、くのたま長屋はどこぉ!?」

まだあどけないその顔を涙で濡らして、あらぬ方向へと進んでいく。
そんな彼女の手を掴むのはいつも、一人の少年だった。

「てめぇ紅葉!!勝手にふらふら歩くなっていつも言ってんだろうが!!」

「あっ、作ちゃん!!作ちゃぁん!!」




この忍術学園には、もはや名物と言っても過言ではない迷子がいる。
それも3人。
3年ろ組、神崎左門
同じく3年ろ組、次屋三之助
そして、くのたま3年、岩倉紅葉…
そんな3人の面倒を見るのは、いつだって3年ろ組の富松作兵衛だった。

「だーもーお前らいい加減自覚しやがれ!!ふらふらふらふらあっちこっち行ってんじゃねー!!」

今日も今日とて、目を離した隙に勝手にいなくなった紅葉を捕獲し、3人揃って縄で括る。それを引っ張り大きな声で怒鳴りつけ、くどくどと説教を始めた。
の、だが。
ぶちりと小気味いい音を立てて切れる縄。
今だとばかりに走り出す左門と三之助。
愕然とその場に崩れ落ちる作兵衛。
もはや見慣れた地獄絵図。

「さ、作ちゃん!!左門くんと三之助くんが!!追いかけないと!!」

「あああやめろおれが行く!!おれが行くからお前はここにいてくれ紅葉!!」

そしてお節介な方向音痴、岩倉紅葉がそう叫んで姿をくらませてしまうのも、もはや見慣れた地獄絵図である。
あっという間に視界から姿を消した方向音痴三人組に手を伸ばしたまま、作兵衛はがっくりと項垂れ、ギリリと地面に爪を立てた。

「あんの馬鹿野郎共…毎回毎回世話焼かせやがって…!!!」

低くそう唸りながらも、作兵衛が誰を一番に探し始めるのか。
そんなことももう、わかりきった話で。

「紅葉!!!紅葉!!!何処行きやがったぁぁぁ!!!」

草の根を掻き分け直感であちこち進んでいくと、彼の目の前にはいつだって

「ふぇぇぇ…あ!!作ちゃん!!作ちゃぁん!!」

泣きじゃくる、彼女がいて。

「泣くぐらいなら勝手に走り出すんじゃねぇ!!俺の手間が増えるだろ!!」

「ごめ、ごめんなさぁい!!」

「お前はな、黙って俺の後ろにくっついていりゃいいんだ!!わかったか!!」

「うん、うん、わかったよぅ!!」

「ったく。お前が走り出すたびこっちは気が気じゃねぇんだからな!!」

「ごめんね、ごめんね作ちゃん!!」

「ほら、わかったならもういいから泣き止め。目が腫れて不細工になっちまうぞ」

「うん、えへへ、もう泣かないよ!!」

小さな手をまだまだ成長途中の手が包み、はぐれないようにきつく握る。

「さあ、ちゃっちゃと左門と三之助探してやらねェとな」

少しだけ赤く染まった耳を隠すようにそう言って、いつだって作兵衛は紅葉を手を引いて手間のかかる友人を探しに行くのだ。
そんな日常。




(ねえ、何なのあの可愛いカップルは)
(ある意味学園の名物だよ)
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私が書く作はすごい男らしい。誰よりも男らしい。何故?
咲羅様、リクエストありがとうございました



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