草食系な肉食系

くノ一教室では最早お馴染みの、所謂コイバナ。
一癖も二癖もある忍たまが多いけれど、見た目がいいからやれ立花先輩が素敵だとか、食満先輩がかっこいいとか、よくまぁ飽きないなと思う。
素直にそう言うと、くノ一教室の子達は決まって必ず言うのだ。

「そりゃね、不破君とお付き合いしてる貴女はいいわよね」と。
それだけなら別にいい。それは事実だし、隠してるつもりもないから否定もしない。だが、その後に毎回のように付け足される一言が私の心の何処かに引っかかる。

「でも、不破君って草食系男子代表よね」

草食系男子…つまり、おっとりしていてのほほんとしていて、決して危害を加えない男性…危険性のかけらもない、優しい人と言いたいのは何と無くわかる…わかるのだが。

「…毎回訂正させて頂くのもアレなんだが、雷蔵は絶対に草食系男子じゃない」

「えー?またまたぁ!!」

これもまた、いつものやりとり。
私がどれだけ訂正しても、彼女たちは絶対に信じてはくれない。





「あはははは、僕そんな風に噂されてるんだ」

「笑い事ではないのだが…」

このことを雷蔵に話したら、彼は呑気に笑っていた。その笑みは穏やかで、はたから見れば草食系男子と言われても仕方ないとは思う。
だが騙される事なかれ。この男、ほやほやとした物腰柔らかそうな見かけをしている癖に、時たま獣の瞳になる。
それは例えば敵と対峙した時だとか、親友の悪戯が過ぎる時だとか、大切なものが危険に晒された時だとか、

「あれ?僕と一緒にいるのに考え事?」

私が隣に、いる時だとか。

言い方は穏やかなのに、何か不穏な気配を含んだ声に慌てて否定をするが、この時には既に手遅れ。

「違う、そんなつもりでは…」

「じゃあどんなつもりなの?」

「いや、その…雷蔵のことを、考えていて…」

「そうなの?それは嬉しいなぁ。じゃあ、もっと僕のこと考えてね」

そう笑って、彼は強引に私を抱き締めて、息もできないほどの口付けをする。
くノ一教室のコイバナと同じくらいに飽き飽きするほど重ねられたこの行為。
しかし私は何故か飽きもせず、毎回毎回この行為に溺れる。


何故かだって?
…そんなのは、愚問だ。


(雷蔵は草食系男子ではない。ロールキャベツ系男子、だと思う)



〜20140831 拍手御礼

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