鬼灯

何か面白いことはないもんかと裏庭にきてみたら、目にも鮮やかな橙が飛び込んできた。
その周りにはにこにこと楽しそうにお喋りをしている体育委員会。

「なにやってんの?」

「あ、先輩!さっきマラソン中に裏山で鬼灯をたくさん見つけたので、みんなで、ほら!」

思わず声をかけたら、金吾がにこにこと手元の橙を見せてくれた。
そこには幾つか鬼灯の残骸があり、おやつ代わりに食べていたことが伺える。
たくさんあるので先輩もどーぞ、とちっちゃかわいいお手手で幾つかの鬼灯を渡された。

「わお、ありがとー!!」

「いーえー、まだまだありますから」

2年生の癒し系、時友くんにも微笑まれ、やっぱ後輩って可愛いなぁと思いながら、やわやわと実を揉んでプチリと口に運んだ。
それをなんでかじいっと見ていた迷子の迷子の次屋くんが、ちら、と視線を外した。

「?」

気になってそれを追ってみると、離れた場所に深緑(暴君)。
それを慌てた様子で宥めてるっぽい紫(滝)と、山のように積まれた橙。

「………次屋、なにあれ」

「………一種の鍛錬、ですかね」

なんじゃそりゃ、と思っていると、離れているにもかかわらず、結構な喚き声が聞こえてきた。

「七松先輩!!!少し落ち着いてください!!!」

「これが落ち着いていられるか!!!後輩に出来て何故私に出来んのだ!!!」

「いやそれはもうなんと言いますか、えーと、七松先輩のですね、腕力というか握力がその、大いに大胆でいらっしゃるからでして!!」

あわあわと凄い丁寧に大量のオブラートで包み込みながらも、滝は七松先輩に馬鹿力と告げている。あいつは死にたいのか?
とその瞬間、ぶしゃっと飛び散る橙。

「だぁ!!くそッ!!もう一個!!」

そう喚き、もう一個、もう一個と鬼灯を飛び散らせていく七松先輩。貴方は鬼灯に何か恨みでもあるのか。

「あーあ、何個目だよ…」

「73個目です」

呆れたような次屋の呟きに、ほわわんとした笑顔で時友が答える。

「………簡単なのにな…」

唇を突き出しながら、金吾が呟いたその言葉を聞いて、全員が苦笑い。

「だーもー!!!」

まるで癇癪を起こしたように鬼灯をぶん投げて、七松先輩は珍しくイライラした様子で塹壕掘るぞ!と怒鳴って立ち上がった。
うん、もう嫌な予感しかしないw

(何だいたのか!!お前も来い!!体育委員会、塹壕掘りに出動だ!!)

(ですよねーwww)


鬼灯の実を外すためには、根気と優しさが必要です。
あれまてよ鬼灯って食えたっけか?


〜20140731 暴君フェス拍手

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