スイカ


ごろりと目の前に転がる緑と黒の衝撃。軽く叩くとぽんぽんといい音がして、食べ頃を告げている。
そう、夏の風物詩、スイカ。しかもとびきり大きいやつ!!
なんでそんなものがあるのかと言うと、体育委員会がいつものいけどんマラソン中に通りかかった川に流れていたのを拾って来たから。
そして、よく通る七松破壊委員長の

「スイカ割りするぞー!!」

の声にのこのこつられてやって来た私。曲がり角からひょこりと顔を出して、慌てて引っ込めた。

「滝夜叉丸!!もっとちゃんと狙え!!」

「狙ってますよ!!当たったじゃないですか!!」

「でも割れてないぞ?」

「当たり前です!!手刀でスイカなんて割れません!!」

…私の知ってるスイカ割りと違う…

「えー?ちゃんと割れるぞ?鍛錬不足なんじゃないのか?」

「なっ…!!くっそぉぉ、忍術学園一優秀なこの滝夜叉丸!!やって見せますよぉぉぉ!!」

滝の雄叫びを聞きつつそっと周囲を伺うと、スイカの周りには小さく蹲る井桁と青と萌黄がひとつずつ。
それぞれ利き手を押さえて震えている。いやぁ、無茶さすなぁ。
遠い目をしてそんなことを考えていたら、不意にめこ、という音と滝の悲鳴が聞こえた。

「ぎゃああああ!!手がっ、手がぁぁ!!」

「あーらら」

不覚にも七松先輩の笑いを含んだあーららに噴き出しそうになって、大慌てで口元を押さえた。あぶねー。
もんどりうって倒れた滝を見て、七松先輩はガシガシと頭を掻く。そして、情けないなぁと眉を下げてスイカの前に立った。

「もー、じゃあ見本な?」

「七松先輩!!そのスイカ冗談じゃなく硬いです!!やめた方がいいですよ!!いくら七松先輩でも…」

「そうです!!実が詰まってパンパンだから反発力がパネェっす!!」

「だいじょーぶだいじょーぶ」

必死にやめさせようとする滝と…あのー、3年の、方向音痴の大きい方…あ!!次屋くん!!あの子が説得するも、七松先輩は聞く耳持たず。

「怪我をされたらどうs「ふん!!」…」

「ほらな、割れるだろ?」

挙げ句の果てには説得中にばこりとスイカに一撃を食らわせて、ドヤ顔。スイカ?七松先輩の手刀で木っ端微塵。割れたけどね。確かに割れたけど粉々に飛び散って多分あれもう食えねーわ。

「あー!!スイカが木っ端微塵に!!」

「「「「…………。」」」」

「…………。」

「まあいいか!!お前らー、拾って洗ってスイカ食うぞー!!」


食うんかい。


〜20140731 暴君フェス拍手

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