金魚
「あれ、七松先輩?何すかそのでっかい桶…」
「ん?ああ、これは今竹谷に頼まれて預かったものだ。ほれ」
そう言って、七松先輩は腕に抱えた大きな桶を少しだけ傾けて中を見せてくれた。
そこには、まぁ可愛らしい一寸ほどの金魚が3匹、水草と共に入れられていた。
「え、七松先輩これ喰うんすか?」
「預かったと言ったろう?」
「ススすスンマセン!!!……つか、なんかいいですね金魚…夏らしくて涼しげだし、可愛い…でも、なんで預かったんですか?」
「いやぁなぁ、私もよくわからんのだが、鍛えてやってくださいと言われて渡されたんだ。でもこいつら走れないし、どうしたもんかと…とりあえず、長次に色々聞いてみようと思ってな!!」
「それがいいと思います」
「因みに名前は私がつけたんだ!!」
「へぇ!!何て名前ですか?」
「この赤いのが刺身、白が混ざってるのが干物、ひらひらしたのがひらめだ」
「喰う気満々じゃないすか!!!しかも最後のえらい出世してるし!!!最悪のネーミングセンスですよ!!!」
「あ?」
「いや、立派なお名前だなぁと!!!名の通り立派に育つんだぞー?あ、しまったぁ、私先生に呼ばれてるんだったぁ、七松先輩、シツレイシマース」
目も当てられないほどの棒読みで、私は七松先輩にくるりと背を向けて猛ダッシュで逃げた。
可哀想にハチ先輩…あなたのとこの可愛い金魚ちゃんたちはパクリと一思いに食われてしまうでしょう。
でも止められない。無理。死にたくない。
………しかし後日、嬉しそうなハチ先輩がいつぞやの桶を抱えて歩いていたので、声をかけて中を覗き込むと、そこには立派に育った金魚ちゃんたちが元気に泳いでました。
「え、つかでっか!!!この短期間でこんなに!?7寸はありませんか!?」
「そーなんだよー!!立派に育ててもらってなぁ!!」
「いやいやこれもうなんか育つとかそーいうんじゃ…」
「おほー、元気元気!!」
「七松マジック恐るべし…」
「おほ…ッ!?」
「あ、…!!?」
「「(歯型がついてる、だ、と…!?)」」
〜20140731 暴君フェス拍手
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