ときめき潮江文次郎



薄暗く狭い空間に、ゴソゴソと蠢く二つの影があった。

「ちょ、文次郎!!狭い!!もっとあっち行ってよ!!」

「バカタレぃ!!静かにせんか!!見つかるぞ!!」

モゾモゾ蠢くその影は、まるで何かから逃れるように必死に気配を消して薄暗く狭い空間…天井裏に潜む。

「なんで6年にもなって隠れんぼ…?」

「知らん…」

意味がわからない、と呟く彼女と同じように文次郎も溜息を吐く。

「…まぁ、仕方ないか。小平太だしね」

「ああ…小平太だしな…」

揃って級友である暴君の名を出すと、妙に納得できた。
記憶を遡ること少し前、相変わらず体力を持て余した暴君こと七松小平太の提案で、何故か6年全員で隠れんぼをすることになった。
散々反論を試みた2人だったが、暴君の押しの強さに結局折れ、仕方なく付き合ってやることとなった。

「…まぁバレーよりはマシだけど」

「しっ!!」

「!!?」

ぼそりと呟いた彼女の言葉を遮るように、突然文次郎が彼女の口を掌で覆った。
驚きつつも彼の真剣な表情を見て、周りの気配を探る。

「(…近い!!)」

しかし気配を探ることよりも、思ったより近い文次郎の顔に意識がいってしまい、彼女の心臓はドキドキと激しく脈打つ。
鼻の先が触れ合うほど近い距離に耐えきれなくなって身を捩らせると、動くなとばかりに彼の逞しい腕で抱き締められた。

「…おい…」

あまりのことにパニックを起こしかけている彼女は、耳元で突然聞こえた低い彼の声に、ぞくりとした快感が腰に走るのを感じた。

「じっとできないなら、しがみついてろ」

そっと囁かれたその言葉に、彼女は熱を帯びる頬をそのままに、ぎゅうっと文次郎の胸に顔を埋めた。

「(やばい、今のはやばい、文次郎の癖に、かっこいい!!)」

ぐりぐりと彼の装束に額を擦り付けて悶えている彼女を、文次郎は不思議そうな顔で見ていた。

〜20140630 6年い組の日記念拍手

[ 15/141 ]