プレゼントはまさかの食べ物

目の前に突き出されている無骨な手に、茫然とする。
否、正しくはその無骨な手に握られ差し出されているおにぎり。それに茫然としている。

「な、なに…?」

全くもって理解できず、恐る恐る問いかけると、私の目の前に立って無骨な手を伸ばしている物凄い隈の男は、眉根をぐっと寄せて何かをもごもごと呟いた。

「え?なに?聞こえないよ文次郎」

「だからッ、やると言っとろーが!!」

顔を近付け耳に手を添えて聞き返した所に大声でそう叫ばれて、私は思わず飛び退く。
くゎーん、と鳴る耳を押さえ、文次郎を睨みつけた

「うっ、さいな!!耳元で急に叫ぶな!!」

「貴様が何度も聞き返すからだろ!!」

「一回しか聞き返してないでしょ!!」

「なっ、ばっ、バカタレぃ!!」

「バカタレはお前だ!!」

そのままギャーギャーと言い合うが、ある程度がなりあった後冷静になり、再度握られたおにぎりを指差し文次郎に問いかける。

「んで、突然なんでまたおにぎりくれる訳?」

私のその言葉に文次郎はぐっと黙り、何故だか顔を背けてボソボソ小さな声で呟いた。

「…今日が、誕生日だと、聞いた…」

消え入りそうなその呟きを何とか拾い、驚く。
まさか、この鍛錬馬鹿が、忍術学園一ギンギンに忍者しているこの男が…


「私の誕生日、祝ってくれるの…?」

かぁ、っと頬を染める文次郎を見て、私の顔にも熱が集まる。
文次郎の手の形に歪み始めたそのおにぎりをそっと両手で受け取り、照れる彼を見つめて微笑む。

「ありがと、文次郎」

何とも言えない表情をした文次郎がまたボソボソと何かを喋った。


「え、何?」

まるで長次と会話している時のように聴覚神経を酷使する。しかし結局聞き取れず、私はまた聞き返した。
すると、更に真っ赤になった文次郎が突然私の胸ぐらを掴み、怒鳴った。


おめでとうっつってんだろ!!

〜20140424拍手御礼

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