プレゼントは貴方の言葉

明日の授業で使う火薬を取りに行ってくれと山本先生に申し付けられた私は、夕焼けに赤く染まりつつある校庭を背に急ぎ足で焔硝倉に向かった。
そこでは火薬委員の面々が丁度委員会を終わらせようとしているところで、慌てて同学年の紫色の名を呼ぶ。

「タカ丸さぁん!!」

私の呼び声に振り向いた同学年だけど二つ年上の男は、瞳をぱちりと瞬かせた後、やぁ、と片手を挙げた。

「どうしたの?」

「丁度よかった、火薬を取りに来たんですけど」

「あぁ、くノ一教室の明日の授業用だよね、久々知くんから聞いてるよ。ちょっと待っててね」

そう言ってタカ丸さんは焔硝倉の中に入って行き、しばらくして火薬壺を一つ抱えて出てきた。

「ありがとうございます」

「いーえー」

何故かほのぼのしてきた私たちの周りの空気。
それを裂くように聞こえたのは、火薬委員会委員長代理の久々知兵助先輩の声だった。

「なんだ、珍しいな。いつもは学年代表が来るのに…」

「ああ、たまたま山本先生に捕まってしまって…誕生日なのについてないですよ」

あは、と笑い軽い気持ちで久々知先輩にそう告げた私の肩を、突然タカ丸さんがガシッと掴んだ。

「え!?誕生日なの!?今日!?」

「いたたた!!ちょちょちょ、痛いですタカ丸さん痛い!!」

「どうして教えてくれなかったの!?」

「いだだだ指が指が鎖骨の下に喰い込んでででで!!」

予期せぬ指圧に悲鳴を上げる私を気にも留めず、タカ丸さんは酷いよ酷いよとひたすら私を揺さぶる。
それを見兼ねた久々知先輩が止めに入ってくれ、私の鎖骨は守られた。

久々知先輩に引き剥がされたタカ丸さんは、どこかしょぼくれており、私は不思議に思って首を傾げた。

「タカ丸さん、どうしたんですか急に…」

「だって…だって、折角年に一度の君の誕生日なのに、僕、知らなくて、何も用意してないよ…」

しゅーん、と、まるで子供みたいに落ち込むタカ丸さん。
そんな年上の同学年のバナナみたいな髪を、私はそっと撫でた。

「そんなの必要ありません。お祝いの言葉だけでも、私は嬉しいです」

私のその言葉にぱぁっと瞳を輝かせた彼は、艶やかな髪をふわりと揺らして、キラキラと笑った。

お誕生日、おめでとう

〜20140424拍手御礼

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