思いやり?実験?
怪しげなモノが入った乳鉢をカチャカチャいわせて、不運大魔王こと6年は組の善法寺伊作はじりじりと私に迫ってくる。
一体なにが起こっているのか、それは私が聞きたい!!
【不運大魔王】は【マッドサイエンティスト】みたいな表情で、それはもう楽しそうにとうとう私の腕を掴んだ。
「ギャあ!!離せ不運がうつる!!」
私のそんな罵倒も、どこ吹く風だ。
「うつらないよ、ほら、怖くないから」
大丈夫、ちょっとだけ、ちょっとだけだからと、全然大丈夫じゃなさそうなことをいいながら、伊作は手に持った乳鉢を私の顔に近づけてくる。
止めてくれまだ死にたくない、そう思って、私は必死に顔を逸らす。
「大丈夫だよ、ちょっと苦いかもしれないけど…」
全然見当違いな事を言ってほらほらいい子だから、と乳鉢を私の頬にぐいぐいと押し付ける伊作。
さすがに痛いし頭に来て、思いっきり伊作の鳩尾に拳を叩き込む。
「いい加減にしてよこの変態!!何の実験だ!!」
そう叫び、もんどりうって苦しむ伊作を蹴飛ばす。
すると伊作は苦しげに顔を歪めながらも、実験?と不思議そうな顔をして私を見た。
何だかおかしな空気が漂い始めた医務室。
私は、少しだけ冷静になって、事の起こりを思い出す。
いやいや、思い出してもやっぱり伊作がおかしい。
そう、私は伊作に医務室に来てくれと呼び出され、行ってみたら急にこれ飲んでと乳鉢を差し出され、断ったら伊作がハアハア言いながら無理矢理私を…ってこれだと誤解を招きそう。
「いや、実験であってるじゃん」
私のその冷たい言葉と瞳に、伊作はぶんぶんと首を振り、やっと詳しいことを話し始めた。
「最近疲れてるって、ぼやいてたよね?」
「…まあ、試験続いたし…」
「だから、僕、栄養剤を作って…飲んで欲しくて…」
ほのかに頬を染めて、ちらちらと私を見ながら伊作が恥ずかしそうに呟いた。
「伊作…」
私も俯いて、彼の名を呼ぶ。
私の声に反応した伊作は嬉しそうに顔を上げ、私を抱き寄せ………ようとしたところに、私のボディーブローが綺麗に決まる。
もるすぁ!!みたいなことを叫んでバターンと床に倒れた伊作を見下し、私は冷たく言い放つ。
「ふざけんじゃないわよ」
それならそうと先に言え!!!
〜20140401拍手御礼
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