女子会

6年生たちが医務室に集まっていた同時刻、同じようにくのたまたちが各々お菓子などを持ち寄りくのいち長屋の角部屋に集まっていた。
他の部屋より造りが広いこの部屋は、たまにくのたまたちの談笑の場として使われることがある。
きゃいきゃいと楽しそうにはしゃぎながら、学年関係なく楽しそうに笑っていた。その話題は、案の定、学園で保護している諸浜稔について。
彼はくのたまからの強い勧めで、小松田さんの補佐、という職についている。
事務員なら許可なくくノ一長屋に足を運べるから会う機会が増える、と言うのが彼女たちの狙いらしい。
おしゃべり大好きな女の子に嫌な顔ひとつせず付き合ってくれるし、ヘイセイという平和なところ育ちと言う穏やかな性格も相まって、その人気はうなぎのぼり。


 
「ねえねえ、稔さんって本当に格好いいわよね。ヘイセイのお話も面白いし、なんて言ってもあの優しさが素敵だわ!!」

「やだトモミちゃん、戸部先生はどうしたのよぉ」

「なによ、そうこちゃんだって稔さんの前では小食気取っちゃってさあ。今更女の子らしくしたって遅いんじゃないの?」

「やっだぁ、ユキちゃんたら毒舌〜!!」

トモミ、そうこ、ユキ、しおりがお煎餅を齧りながらけらけらと笑う。お年頃真っ盛りな彼女たちは稔の容姿、優しさ、面白さに高い評価を下しているらしく、しきりに格好いい格好いいと褒め称えていた。
そんな彼女たちを微笑みながら眺めているのは、くのたまでも更に人数の少ない上級生たち。暖かな湯気を立てるお茶を啜りながら、可愛い後輩たちの話を聞いて、時折くすくすと小さく笑っている。
そんな少し落ち着いた彼女たちに、あやかがそういえば、と話を振った。

「澄姫先輩、最近よく稔さんとお話されていますよね?澄姫先輩は私たちが束になっても敵わない程の美人だから、羨ましいです!!どうやったらそんな美人になれるんですかぁ?」

どこか冗談めかしたその言葉に、澄姫は穏やかに口角を上げる。

「貴女たちだって、心配しなくてもそのうちとんでもない美人になるわよ。私の美貌は持って生まれたものだから真似できないかもしれないけれど、皆それぞれ可愛いじゃない」

「わぁ、完璧超絶美女だからこそのお言葉ありがとうございます!!」

「今の言葉、棘があったわね?そういうこと言う子は…こうよ!!」

静かに湯飲みを置いてあやかの話を聞いていた澄姫だが、吐かれた毒ににんまりと笑い、目にも止まらぬ速さで腕を伸ばして彼女の脇腹を擽る。
きゃあ、と楽しそうにはしゃぎながらも謝るあやかを散々擽って、ふうと一息吐いた彼女は元いた位置に戻り、お茶を啜りながらぽそりと呟いた。

「…でも、みんなの気持ちも良くわかるわ。うふふ、本気で稔さん、落としに掛かろうかしら」

格好いいものね、と小さく笑った澄姫に対して、くのたまたちが揃ってきゃあきゃあと歓声を上げた。

「えええ、本気でですか!?そんなの絶対に靡いちゃうに決まってますよ!!」

「きっと瞬殺よね!!」

「やだー、私たち勝ち目ないー!!」

すっかりテンションが上がって大きな声で交わされる姦しい会話。
その合間を、ひゅうひゅうと風の吹きぬける音が響いていた。


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