飛び越せ!俵ジャンプ!

「さあそろそろ第二アトラクションに差し掛かります。トップは体育委員会委員長七松小平太選手!!持ち前の体力で全力勝負だ!!」

勘右衛門の視線の先、第二アトラクションのスタート地点に到達した小平太は、坂道の頂上からゴロゴロと転がってくる俵をリズムよく跳び越えていく。
そしてほんの少し遅れて到達した澄姫も、後続の伊作と与四郎の動きに注意しながら、迫り来る俵をひょいひょいと飛び越え、小平太の後を追った。
だがその直後、ぼすんと何かにぶつかる。

「いたっ…ちょっと小平太!!急に立ち止まらないで頂戴…」

ぶつかった鼻を押さえながら、何故か呆然と立ち止まっている小平太を睨みつけて、絶句。

「………さすがに無理だ!!」

「きゃあ!!」

キッパリと何かを諦めたような笑顔の小平太と、悲鳴を上げた澄姫。
目前に迫るのは、見上げるほどの大きな大きな俵。
さすがにこれは飛び越せないと諦めたが、逃げるのも手遅れ。見事巨大俵に跳ね飛ばされた2人はゴロゴロと坂道を転がり落ちた。

「おおっと!!先頭争いをしていた七松小平太選手と平澄姫選手!!巨大な俵に撥ねられた!!後続の善法寺伊作選手と錫高野与四郎選手も巨大俵は跳び越せない!!逃げてーっと!?その隙に潮江文次郎選手と立花仙蔵選手が追い抜き先頭に立ったぞー!!」

「お先!!」

「災難だな!!」

勘右衛門の実況に被せるように、ニヤリと意地の悪い笑みを浮かべて坂道を駆け上がる文次郎と仙蔵。
もう大きい俵は転がってこないようで、このまま一気に駆け抜けてやるとスピードを上げた、その時

「しんべヱ!!鼻水インフェルノ(←必殺技名)だ!!」

背後から、留三郎の声。

「おおっと!?食満留三郎選手がなにやら指示を出しました…っと!?坂道の頂上に…あれは…用具委員会の福富しんべヱだ!!」

太陽を背負ったしんべヱが、ふえっくしゅ、とくしゃみを一発。
まるで海に網を打つように広がる鼻水。青褪める仙蔵。
まるでスローモーションのように、坂道にまき散らかされた鼻水に足を取られ、文次郎と仙蔵は坂道を転げ落ちた。
それを勝ち誇ったように高笑いしながら見ていた留三郎もまた、足を滑らせた伊作に巻き込まれて転倒。

「これは大波乱!!用具委員会の罠、鼻水インフェルノにより大転倒!!おおっと!?何とか立ち上がった潮江文次郎選手、平澄姫選手、錫高野与四郎選手が坂道を駆け上がっていきます!!」

何とか体勢を立て直した文次郎が見事な身のこなしで鼻水の隙間をぬって坂道を上がり、その後の安全地帯を与四郎と澄姫が追いかけていく。
転倒者を視界の隅に捕らえながら、長次もまた坂道を上がり、更にその後ろを小平太、留三郎、伊作が追いかける。
そして最後に、心に痛手を負ったらしい仙蔵が、懐からありったけの宝禄火矢を取り出して、般若の形相で留三郎を追いかけていった。

「あーらら。立花仙蔵選手、レースの趣旨が変わってしまった模様です!!逃げる食満留三郎選手に宝禄火矢を投げつけている!!現場は大混乱です!!」

「せっ、仙蔵!!待て、落ち着け!!妨害ありのレースだろ!?それに可愛い後輩のしたことじゃないか!!なぁ!?」

「…可愛くないとは言わんが、もうちょっと何とかならんのか?ああ!?」

「い、いや、それはその…とりあえず武器は置こうぜ?な?」

「問答無用!!」

坂道の頂上で留三郎をひっ捕まえた仙蔵は、ヒクヒクと引き攣った笑顔で留三郎の胸倉を掴んだ。
そしてその胸倉の中に、火のついた宝禄火矢を放り込む。
導火線も短くなっていたが、完全に頭に血が上っている仙蔵は気付かない。
どむ、という大きな爆発音と共に、2人はひゅうと空に打ちあがった。

「ああーっと!!立花仙蔵選手決死の自爆により食満留三郎選手を葬り去ったー!!作法委員会、用具委員会戦線離脱だぁー!!そして先頭はそろそろ第三アトラクションに突入かー!?」


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